『Sword and oath, And all you need!』 しゅ、しゅ、と目の粗い布と剣の腹が擦れる音が目の前で立てられるのを、ロイドはずっと見つめている。
右から左へ──向こうにとっては反対だ、ゆっくりとした、だが決して軽くはない手の動きが繰り返されるのを、ただ、ずっと見つめている。
その手を見るのが好きだった。この時間が。目の前のひとの、剣士としての父の立ちふるまいを見ているのが。
少し距離を空けて並んだ寝台にどちらからともなく向かい合うように腰掛けて、いや、大抵の場合はロイドのほうが先だ、夜の他愛もない時間を過ごすのが常だった。風呂も済ませて服を着崩していつでも寝てしまえそうな格好のロイドとは違い、クラトスはまだ旅装を少し解いた程度だ。
剣の手入れをするクラトスの手元、それから表情をまじまじと眺めていられるのは、自分のぶんを早々に終えてしまった時の特権だ。
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