顔都市部に照りつける強い日差し
夕方の祭り事に向けて大勢の人間が準備をしていた
ある者は屋台や看板の設置、神輿が通る大通りでは警備スタッフが集まり配置場所の点呼をとっている
そしてその場にいる全員がパートナーデジモンが端末の中、ホログラムに化けるなどそれぞれ人間たちのそばにいる
ここはとあるデジモンと共に快適な生活ができる街
デジモンとパートナー関係を持った人間が住みやすいと有名だ
この街を築くまで多くの時間や並々ならない苦労があった
何も無かった土地を買い占めプロジェクトを立ち上げ資金や生活インフラ完備、地域住民や野良だったデジモンを社会に適合できる研修、保険施設といったサポート活動をし続けた
ここまで上手く人間とデジモンが共生し社会を運営できたのは陰ながら支えてくれた存在がいたからだ
しかし誰もその存在を知らない
敢えて名を公表しないようにしている
誰もがその名を聴けば恐怖しパニックになるのを防ぐ為だと当の本人は市長にのみ話を通している
その正体は…
『アポ!あそこに吸血鬼デジモン用のお店屋さんがあるよ!』
『あとで行ってみるか?』
『うん!』
複数の高層ビル50階が建ち並ぶ15階にあるカフェのラウンジの窓から祭りの準備の様子を彼と彼女は眺めていた
外は30°を超える暑い気温にも関わらず、男は黒い長袖長ズボンのロングコートを身に纏い、人肌はまるで死人のような灰色、人ならざる光る黄色の瞳を隠すようにキャップを深く被る彼の名はアポカリモン。
もう一人はコウモリの翼のデザインが入った水色の半袖短パンのパーカーを着た金髪の少女、ピコことピコデビモン。
『お外暑いのに皆よく働けるね』
『この世界の住人は働き者だからな』
『アポもたくさん働いたじゃん』
『まさか、私はただ支援しただけだ』
『アポがいなきゃ皆笑顔になれなかったよ』
『ピコ、私は誰かの為に行動したんじゃない。あくまで自分の為だ。私が死ぬための…』
『…アポ』
『この土地を買収したのは気になることがあったからだ』
『どゆこと?』
『例えば人間がデジモンに顔を存在そのものを奪われたらどうなる?』
『顔?』
『一時的だがそれは存在しない存在となるらしい』
『存在しなくなったらその子はどうなるの?』
『強力なものでなければ時間が経てば自然と呪いは解ける、しかし…運が悪ければその土地の怪異に取り込まれる。上手く利用すれば我が身を消せるのではないかと思ってな』
『怪異?お化け?』
『ピコ、お前が話しかけている私も怪異に等しい』
『アポはお化けじゃないもん。ちゃんと生きてるもん』
『正体不明と判断される私は果たして生きているのかすら分からないが、ピコがそういうのならそう受け止めておこう』
そう言ってアポカリモンの無表情の顔が一瞬作り物のお面に見えたがピコは気のせいだと思い、そのまま注文した飲み物をストローを使って飲み始めるのであった
これは顔を盗られるお話し