「一緒に死んで」って言われた三公の話2◆メルヒオールの場合
「残念だけどそれは無理だね」
即答だった。しかも笑顔で。食い気味に。まだセリフ言い切ってない。彼の性格からして断られるだろうという事は分かっていたが、こうもきっぱりと拒否されるといっそ清々しい。
「……どうして?」
「生憎、私は転生とか死後の世界とか、そういう不確定なものは信用していないんだ。死んだらそれで終わりさ。……こんな話を持ち掛けるのだから、君は今かなり辛い事情を抱えているんだろう。でも」
そう言って彼は私の両手を優しく握り、私の目を見た。いつもと違う真剣な眼差しで見つめられ、頬が熱くなる。
「でも、死なんて曖昧なものに縋らなくたって、ここにある確実な愛に希望を持つ方が、遥かに楽しいと思わないかい?君の時間はどうせ限られている。それを今すぐ終わらせてしまうのはあまりに勿体無い。私はその中で、君と一緒にいる時間を少しでも長くしたいんだ」
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