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    888

    @8bee_hive8

    キダかいたりダネかいたりしてる。

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    地の文が上手く書けなくて苦しんでます。最後まで書けるかびみょいからとりあえず現時点で書けてる分晒す。

    毎週金曜日恋人にプレゼントを贈るndとそれを楽しみにしているnzが“特別”幸せなお話です。
    完成したら支部に上げたい。

    ##ダンネズ

    “普通”の恋人たちの話ダンデは毎週金曜日、花を買って帰ってくる。たまにチョコレートやクッキーなども共に携えていたいするが、花だけは必ず、忘れることなく買ってくる。
    「ラベンダーですか」
    スラリとしたシルエットの花束を受け取って、真水が入った花瓶にラベンダーを移し替えていく。
    「ラベンダーの香りはリラックス効果があるんだって」
    鞄をソファへ置いて、上着を脱ぎながらダンデは花屋で聞いてきた話をおれにしてくれた。
    「パートナーの仕事の締切が近いことを話して、適度に肩の力を抜いてくれる花を、と頼んだんだ」
    ダンデは毎週金曜日、花を買って帰ってくる。毎週毎週、律儀にも違う花を。おれはそれを玄関で受け取って、花瓶に移し替えながら、その花を選んだ理由を聞く。
    今回は香りにリラックス効果があるというラベンダー。移し替え作業が済んだので、試しに一呼吸、ラベンダーの香りを肺いっぱいに吸い込んだ。
    「……うん、いい香りですね」
    「だろ? オレも気に入ったんだ」
    人好きする笑顔でそう言われたら、今週分のストレスは粗方どこかへ飛んでいく。毎週行われるこのやり取りに飽きなどは一向にやってこない。
    「シャワー浴びてきな、ご飯出来てますから」
    「うん、ありがとう」
    ダンデが毎週金曜日に買ってくる花たちは、土日の間リビングのテーブルの中央に鎮座して、俺たちの休日を華やかに彩ってくれる。モノクロの家具が多いこの部屋で、一際彩度の高い花が主役のように存在感を放つのだ。





    「わ、美味しいな」
    「どうも」
    今日のご飯はレンズ豆のスープとコテージパイ、それと適当に野菜をちぎって和えたサラダだ。金曜日の夜はパイが多い。
    バトルタワー開設当時こそ毎日のように残業していたダンデだったが、同棲をするにあたって「滅多なことがない限り残業せず帰ってこい」という旨を伝えたら、素直に就業時間を守るようになった。お陰で帰りを待って共に夕飯にしても適切な時間にご飯を食べられる。
    「サラダクリーム、味変えたか?」
    「流石、気付きましたか」
    ダンデの食器はもうほとんどが空で、あとは残りのサラダが二口分くらい。食べる速度は相変わらずだが、これでもゆっくりになった方、らしい、本人曰く。
    「砂糖を少し増やして、クレソンを入れてみました」
    「……実家の味に似てたから驚いたぜ」
    それもそのはず、この前ダンデの家に招待されたとき、お義母さんにサラダクリームの作り方を教えてもらったのだ。
    早食いは言うほど直ってないが、毎食味の感想を添えてくれる。変化には敏感なヤツだから、こちらが普段しないような工夫を施せば毎回そこに言及してくれる。自分が食べ終わってもおれが食べ終わるまでは席を立たず、その日職場で起きた出来事を話してくれる。表舞台に立っていた頃の振る舞いからは容易に想像出来ない、柔らかな表情で。
    「そういえば先週、成り行きでスタッフと帰宅路を共にしたんだが」
    俺のご飯はようやく折り返し地点に着いたところ、ダンデは先週の帰り道での話をしてくれるらしい。金曜日の話題提供にしては珍しい、先週の話だ。
    「途中で花屋に寄ったら、意外だと言われてしまって」
    “あのときなんと返せば正解だったのか”と言いたげな表情から察するに、リーグスタッフのその発言でいい思いはしなかったみたいだ。
    「オレみたいなやつはいつでもどこでもポケモンファーストで、パートナーのことなんか眼中にないとでも思っているみたいだった」
    「まあ、ポケモンファーストなのは合ってますし」
    視線を落として顔を強ばらせているパートナーを好きにさせて、おれはおれの食事を続ける。話のタネはこれだけじゃなさそうだ。
    「今日のランチでも、聞いてしまったんだ」

    『でね! 赤いチューリップ買ってたの!』
    『え〜いがーい!』
    『店員さんとも親しげにしてたからあれしょっちゅう買ってるよ絶対!』
    『恋人に花贈ってるオーナーとか全く想像出来ないんだけど!』
    『なんか言っちゃ悪いけどさ〜、普通に彼氏してるオーナーってちょっと意外だよね』
    『分かる〜! ポケモンのことしか考えてなさそうなのに』
    『あ〜んでもオーナーから花貰ってる彼女さん羨ましい〜私なんか花どころか普通のプレゼントさえそんな貰ったことないよ』
    『あ、むしろ普段あんま構えないから花贈って誤魔化してたり?』
    『えー! それは流石に最低すぎ!』
    『あはは! 冗談冗談! ていうかそんな頻繁に花もらっても大事に出来る気しないな私〜』
    『それ分かる〜……オーナーの彼女さんてどんな人なんだろ』
    『まあ、あのオーナーの彼女が務まるんだから、その人も余っ程の変わり者に違いないでしょ』

    「……なんですその純度百パーセントの無礼しかない会話は」
    「オレがいるって気付いてなかったみたいでな、かなり盛り上がっていたぜ」
    困ったように笑いながらそう語るダンデは、その時の状況も細かく説明してくれた。
    いつも自身の執務室で簡単に済ませるランチを、今日はカフェテリアで過ごそうと珍しく気が変わったこと。景色がよく見える窓際の席に腰掛けたこと。食事を済ませボーッと外を眺めていたら、背後の植木を跨いだ席にリーグスタッフが二名やってきて、先の会話を繰り広げたこと。
    「直接的な侮辱の言葉はなかったけど、馬鹿にされてるのはなんとなく伝わったぜ」
    「……まあ、確実に馬鹿にはされてますね」
    話を聞いてる内にご飯は全て食べ終わって、布巾で口周りを拭う。ベタつきを綺麗に拭き取ってくれた布巾を畳直しながら、浮かんだ問いをそのままダンデに投げかけた。
    「で、何故その話をおれに?」
    ダンデは苦虫を噛み潰したような顔をして、一層顔を下へ向ける。
    「……すまない。 彼女たちが、花を大事にできないと言っていたのが気になって……オレは毎週キミに花を贈っているだろう?」
    懺悔でも聞いているのだろうか。目の前の男は一切も悪いことなどしていないのに、許しを乞うかのような視線でおれの瞳をジィと見つめる。
    「その……花の管理が手間だったなら、やめようかと思って」
    おまえは本当に、“普通”に敏感だね。
    不安になっているパートナーを安心させるために、おれは口を開く。
    「おれはいつも楽しみにしてるんで、おまえが面倒じゃないならずっと続けてくださいよ」
    照れることはない。きちんと伝わるように。目を見て真っ直ぐ。本音はちゃんと染み込んでいく。
    「もし愛が枯れたとしたらその指標にも丁度いいしね」
    「や、やめないぜオレは」
    世間はいつも、おれたちの“普通”を“普通じゃない”と囃し立てる。その言葉たちに、たまに頭を悩ませるダンデはただの、普通の、人間だ。
    「ただでさえこの家はおまえの私物が少ないんだから、花なんて毎日贈ってくれてもいいくらいですよ」
    「……ふふっ、それは流石に、多くないか?」
    ふわりと笑えば花が咲く。ああ、香りのする花とはいいものだな。この香りを聞けば、向こう一週間はこの笑顔をすぐ思い出せることだろう。
    パートナーの分身たり得るこんな素敵なプレゼントを大事に出来ないなんて、あーあ、世の中変わった人もいるものだ。
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