ー酒場で再会、一緒に住むまでの話ー🌱どう見ても君の体質的に酒に強くなさそうだが、いくらなんでも飲み過ぎではないか
🏛️いいんだ、僕はもうこれでしか今を生きている実感や安らぎが感じられない。君にはわからないだろうが重くのしかかる現実に潰れない為に必要なのさ。
🌱酒による安らぎなど一時凌ぎだ。それは現実逃避に過ぎない。その様子じゃ酒場に入り浸っているようだが家には帰らないのか?
🏛️家……か。僕は空っぽになったあの空間を家だとは思えなくなってしまった。だから売って金の足しにしたよ。……家なんてない。
🌱そうか……。つまり行く当てはないんだな。
ところで君が放棄したあの学術資産である研究所は、現在俺の家になっている。本来なら君にも権利があるはずだが
🏛️あの時の……ふうん。いいね、君は帰る家があって。
🌱使ってない部屋が一つある。掃除も行き届いてはいない。
カーヴェ、俺の家に来ないか?
🏛️……んぅ……え?家って何、今から?
🌱そうだな、早い方がいいだろう。
🏛️そう言われても何だか僕は眠くなってきたんだけど……
🌱ならちょうどいい。立て、まだ歩けるだろう。ここからそう遠くもない。買ったばかりの酒もある。
🏛️えーと、飲み直しってこと?まあ、いいよ、行く。それに肴になる愚痴ならいくらでもあるし…………すぅ………
🌱おい寝るな。おい
翌朝
……
……??
🏛️え?アルハイゼン?何故君がいる?ここは……あれ見覚えがあるぞ?
🌱おはよう。よく眠れたか?
🏛️うーなんだか頭が痛い……えっと確か……夕べ君に偶然会ったんだっけ……それから飲んでて、眠くなってその後がよく覚えてないな。
🌱あいにく長々と君の話を聞いてる時間はない。俺はこれから仕事に行く。これは君の鍵だ。
🏛️鍵?
🌱合鍵がないと君も外出が出来ないだろう。鍵もかけずに出歩かれては困る。
🏛️いや、そうじゃなくて、今僕もここから出て行くから……
🌱朝から晩まで酒場に入り浸りの君に外出の予定なんてあるのか?ないならここにいろ。君の部屋は奥にある。自由に使えばいい。
🏛️僕の部屋?え、まさか……
🌱ルームシェアを知らないのか君は
🏛️知ってるよ!!え、本気か?君が?僕と?ルームシェア??
🌱何か不都合でも?帰る家がない君には問題ないだろう、では行ってくる
🏛️え、あ、行ってらっしゃい…
アルハイゼンが仕事で家を出た今、
部屋にカーヴェが取り残された形になった
🏛️……なんでこうなったんだ??寝て起きたらアルハイゼンの家にいるなんてありえない!そうだ、まだ夢かもしれない……いやこの頭痛は現実だ。
一旦落ち着こう、家にいるまではわかる、うん。確か飲み直すはずだった。
鍵をくれる?ま、まあ出かけるなら仕方ないよな。僕もこの頭痛じゃすぐには動けないし。
そして僕の部屋も用意されている?
いやいやそれはおかしいありえない。一体どういう風の吹き回しだ??
昨日、僕はまた何か弱味を言っていたのだろうか。はたまた何か変な約束でもしたのか、思い当たる節がないけれど、嫌な想像はいくらでもできる。
久しぶりに再会した元友人が僕を家に居候させるつもりなんて、しかもあいつに限ってそんなこと……
ー行く当てはないんだなー
家の話をした事をぼんやり思い出す。僕は現状に不満を漏らしていた。それを酒で飲み込んでいたことも話した。家がなくなった事も。
……
深く考えるのをやめよう
仮にこれが純粋な好意だとしたら僕は何を返せるだろう。
暖かい日差しが窓から差し込み、なんだか懐かしい気持ちになり僕はソファでそのままうたた寝をした。