うかうかしてられねえ道の傍で汗を流しながら熱心にぽつぽつと歩き去る通行人に声を掛ける青年。
坊やは少し、数秒の間その青年を見て、自分の手元を見た。
そんな様子を見てアタシは、疲労困憊の青年に「大口のお客様だぞ」なんて冗句を言いながら三段重ねのアイスを買ったんだったかしら。
「……またちょっと開いて来やがったか」
喉の奥が生臭い、傷は深そうだ。
ぎちぎちと縛る包帯の感触と、じんじんと熱を持つ痛み。誤魔化す為にアルコールを飲み込んでもなお、鼻につくぬめった香りが離れない。
「…ッ、…くそ、」
むかむかと胃に上がってくる不快感はまだまだ慣れない。
「ハハ、でも、無事だった。生き抜いた」
「それだけでいい」
ぜえ、と肺から息を絞り出して這いずるような心地で与えられた自分の部屋へと向かう。
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