「こんちはーッス。はいこれ、いつものやつお願いするッス」
「おやラギー。今日はえらくべっぴんさんを連れてるじゃないか」
雑貨屋のおじさんが私を見て眉をあげた。ラギーさんからメモを受け取って、「もしかしてコレかい?」と小指を掲げる。慌てて否定しようとした私の肩をやにわにぐいっと抱き寄せ、ラギーさんが歯を見せて笑った。
「そーそー。ついこないだ、ね」
「おや本当かい? そりゃあおめでとう! 祝いの代わりに少しオマケしとくよ」
「いいんスか! へへ、ありがとうございま~す!」
鼻歌を口ずさみながら奥に引っ込んでいったおじさんの背中を見送り、ラギーさんがそっと耳打ちしてきた。
「今日はそういうことで。口裏合わせといてね、ユウくん」
「えっ! で、でもそんな、人を騙すなんて……」
「じゃあ嘘でしたって言う? だいじょーぶ、ユウくんは黙って隣にいてくれたらいいんで」
嘘をつくのは気が進まなかったけれど、今更撤回する勇気もなくて私はぐっと口を噤んだ。
ラギーさんはシシッと海賊らしい悪い顔で笑って、ぽんぽんと私の頭を二度叩くように撫でた。