一緒にお風呂に入りたいラギ監シリーズ09ラギー先輩と恋人同士になって、2度目の誕生日。
去年も何を贈ればいいのか悩んだけれど。
今年も同じように悩んでいるうちに…ラギー先輩の誕生日がやってきた。
「ねぇ、みんなだったら誕生日に何が欲しい?」
エースとデュース、それからグリム。
いつものメンバーに問いかける。
「オレはバスケシューズかな。」
「僕はマジホイの部品が欲しい。」
「高級ツナ缶がいいんだゾ。」
うん。なんか…聞く相手を間違えた気がしてきた。
というかもしかしてこれはねだられている?
…そんな高価なものは買えないけど。
私がうーん、とうなっていると。
「ってか、ラギー先輩ならなんでもいいんじゃね?」
「なんでもって…。」
「監督生が渡すものなら、なんでも喜んでくれるんじゃないか?」
確かに…そうかもしれないけれど。
せっかくの誕生日なんだから、より喜ばせたいなーって。
「ドーナツ1年分…とか?」
「あははっ。嬉しすぎてすぐに食っちまうかもな。」
「じゃあ…アルバイトを紹介、とか?」
「それも、すぐに行くだろうな。」
ラギー先輩の好きなものを挙げてみる。
んー…なんかしっくりこないんだよなぁ…。
「そんなの、悩んでたって仕方ねぇ!ラギーに直接聞けばいいんだゾ!」
親分の心強い(やや投げやりな)言葉を聞いて、それもそうか…と思い。
私は直接ラギー先輩に聞いてみることにした。
「あの…お誕生日、何が欲しいですか?」
「誕生日?んー…そーッスねぇ…。」
お昼休み。いつもの木陰で一緒にくつろいでいる時に、私は思いきってきいてみた。
ラギー先輩はしばらく考えこんで。
「…何でもいいんスか?」
と、少しいじわるな顔をしてこちらを見る。
…なんだか嫌な予感がする。
とはいえ、自分が言い出したことだし。
それに、好きな人の望みはできるだけ叶えたい。
「私にできることなら…でお願いします。」
「むしろ、ユウくんにしかできないこと。お願いしてもいいッスか?」
「……!はいっ!」
私にしかできないことってなんだろう?という疑問よりも。
私にしかできないって頼られたような気がして、元気よく返事をした。
ラギー先輩がにっこりと笑い、口にしたお願いとは。
誕生日の夜。
ユウくんの時間をオレにちょうだい。
誕生日パーティーが終わったら、オンボロ寮に行くから…待ってて。
4月18日。
ラギー先輩の誕生日。
私は一足先にパーティーを抜け出して、オンボロ寮で待っていた。
何か物を頼まれたわけではなかった…とはいえ、何も用意しないのも気が引けて。
今日はもうたくさん食べただろうと思うけど、先輩の好きなドーナツを用意した。
それから、ちょっとだけ身なりを整えて…。
そわそわしながら待っていると、しばらくして、扉を叩く音が響いた。
「はぁ~、ひどい目にあったッス。」
幸運のプレゼンテンターから、パイをぶつけられたラギー先輩。
言葉に反して、どこか嬉しそうだ。
オンボロ寮に入るなりため息をつき、やれやれといった顔で定位置であるソファに座る。
「あ、今、飲み物用意しますね。」
「後でいいッスよ。…それより、ユウくん。こっち来て。」
台所へ向かおうとした私を引き留め、ラギー先輩はこちらに向かって両手を広げてくる。
私は少しためらったけど、そっと近づいてラギー先輩の前に立つ。
と、そのまま引き寄せられて。
気付けばラギー先輩の腕の中だった。
投げられたパイのものなのか、たくさん置いてあったドーナツのものなのか、はたまたケーキのものなのか。
ラギー先輩からは甘い匂いがした。
「ラギー先輩。あらためて…お誕生日、おめでとうございます。」
「ありがと。」
今日何度も言ったけど、もう一度あらためてお祝いの言葉を言う。
ラギー先輩も呆れることなく、笑顔を返してくれる。
だから、何度でも言いたくなってしまうのだけど。
と、ふと見えた耳に。
「ふふっ。クリーム、まだついてますよ?」
「ん?どこ??」
「えっと、耳の…。」
私が耳のところについていますよ、と手を伸ばそうとするとその手を掴まれてしまう。
もう片方も伸ばしたところで…やっぱり掴まれてしまって。
…これでは身動きがとれない。
「ユウくん。とって。」
「手、離してくれないと…とれないんですけど。」
「ん。だから…ユウくんの口でとってよ。」
先輩は器用に耳をぴるぴるっと動かして、私の目の前に持ってくる。
その様子はすごーくかわいい、のだけど。
「そ、そんな恥ずかしいこと…!」
「えー、オレ、今日は誕生日なんスけどぉ~?」
「それは…そうですけど!」
「これもユウくんにしかできないこと、でしょ?」
「…!!!」
「オレ、お願いがひとつだけ、なんて言ってないッスよ?」
ラギー先輩はあの時と同じようにいじわるな顔をして笑う。
確かに、お願いの数を制限した覚えはない。
ヘリクツとも言えるけど、何も言い返せなくて。
こうなったらもうラギー先輩のペース。
私に逃げ場はない。
「う、動かないでくださいよ。」
「シシシッ。はーい。」
再びラギー先輩は私の目の前に耳を持ってくる。
私はその大きなお耳をじっと見る。
んんんー!やっぱり…かわいい。
…なんかこれってもしかして、ドキドキしてるのは私だけで。
ハイエナである先輩にとっては毛繕い?みたいなものなのかな?
それなら…恥ずかしがることはない?
私はよく分からない理由をつけて自分を落ち着け、勇気を出してラギー先輩の耳をぺろっとなめてみた。
「あまい…。」
「へぇ。…どれどれ?」
「え…、んんっ!」
いつの間にか私の両手を解放し、ラギー先輩との距離がぐっと近づいたなと思った時には…唇が塞がれていて。
しかも味見をするかのように舌を絡めてくる。
離れようとしても、しっかりと後頭部を固定されていて。
私が逃げられないのをいいことに、じっくりと味わうように口内をかきまわす。
「…オレが食べた時より甘いッスね。」
しばらくして唇を離すと、自分の唇をぺろっとなめ、ラギー先輩はまたいじわるな顔で笑った。
再び嫌な予感がしつつもぼーっと見つめていると、ラギー先輩はこつんっと額を合わせて。
「ね?ユウくんからも、キスして?」
まるで選択肢などないように、ラギー先輩は私の頭を固定したまま、腰へと手を回してくる。
ぼんやりとした頭では、正常な判断なんてできるわけもなく。
「もぅ…今日は特別ですよ?」
「…その特別。今日が終わるまでは有効ッスよね?」
「それも…特別です。」
「シシシッ。ユウくんも言うようになったッスね。」
「ふふっ。おかげさまで。」
何だかおかしくなって、お互いに笑い合う。
今日ぐらいは、たくさんの特別があってもいいかな~なんて思えてくる。
「ラギー先輩。お誕生日、おめでとうございます。…大好きです。」
ラギー先輩の瞳を見ながら、私はお祝いとともに自分の気持ちを伝える。
言葉だけじゃなく、態度でも伝わるように…ゆっくりと唇を重ねた。
「シシシッ。とびきり特別なプレゼントッスね。」
次は…
時計の針が明日を告げるまで、まだ少し時間があるみたい。
次は何をお願いされるのだろう…なんて。
本当に今日だけ。特別ですからね?