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    persona1icetwst

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    夜ラギ監ちゃんと外泊許可証の話
    無断でお泊りしに来てたラが外泊許可証を持ってくる話
    いちゃいちゃしてラギ監ちゃん…

    ##ラギ監

    夜ラギ監ちゃんと外泊許可証の話「……外泊許可証?」

     ほかほかのココアの湯気越しに、わたしはラギー先輩がかざした紙の一番上に書いてある文字を読み上げた。先輩は得意げに広げた紙をさらにずいっと突きつける。その頭上で、まだ湿り気の残る耳がぴるっと上下した。

    「そ。今日はちゃーんとレオナさんに外泊許可取り付けてきたんで。確認お願いするッス、オンボロ寮の監督生くん」
    「あ、はい」

     わたしはぴっと背筋を伸ばし、手に持ったココアを丁寧にテーブルに置いて、ラギー先輩が広げた紙にじっと目を凝らした。折り畳み皺のひどい紙の上にラギー先輩の癖のある字で綴られたそれは、エースやデュースが持ってくるものと内容は変わりなかった。
     日時は今日の夜から明日の午前中まで、理由は後輩に勉強を教えるため。右下に流れるような優雅な字でレオナ・キングスカラーと直筆の署名が入っているのもしっかりと確認し、ついと紙から視線を上げた。

    「……はい、確かに。……でも、許可証なんかなくったって、いつだって寮を抜け出して泊りに来るじゃないですか。どうしていまさら」

     わたしの承諾を受け取るや否や許可証を机に放ったラギー先輩を見つめ、わたしは首を傾げる。ラギー先輩が泊りに来るのは何も初めてのことじゃない。むしろ、最近はほぼ毎日のように夜になるとオンボロ寮の玄関扉が叩かれている気がする。いまさら外泊許可なんてと疑問に思うのは当然だろう。
     ラギー先輩はココアに口をつけながら、わたしを横目で見てにやりと笑った。

    「あれ、監督生くん知らないんスか? 他寮への勝手な外泊は校則違反なんスよ」
    「ハーツラビュル寮で耳にタコができるくらい聞かされてるんで知ってます。だから聞いてるんじゃないですか。今まで夜抜け出して朝には戻ってた先輩がどうしていまさら許可証なんて……あ、もしかして、見つかって怒られたんですか?」
    「まさか。うちの寮は放任なんで、やることやってりゃ何のお咎めもないッスよ」

     ずず、と音を立て、濃い色のココアが先輩の薄い唇を濡らす。口の周りについたココアをぺろりと舐め取って、先輩は机の許可証のある一点ををとんとんと指で叩いた。

    「ちゃんと確認した? ほらココ、よーく見て」
    「……『当日夜から翌朝11時まで』……って、夜から朝までってことでしょう? 何も変わらないじゃないですか」
    「えー。ホントにわかんないんスかぁ?」

     ラギー先輩の語尾が跳ね上がる。嘲るような響きにムッとするも、次の瞬間目の前に現れたにんまり顔におもわずびくりと肩が跳ねた。

    「っせん、ぱ」
    「だから、今日の夜から明日の朝11時まで、オレはここにいていいっていう許可を取ってきたんスよ」
    「……え、と」
    「オレがここにいるのはレオナさん公認。公的な許可だから、明日の朝までなーんの邪魔も入らないってことッス」

     ぴっと人差し指を立て、ラギー先輩は胸を張って言った。
     ラギー先輩の言葉の意味を少しずつ少しずつ頭の中で噛み砕く。ようやくその意味を理解して、わたしはパッと顔を上げた。

    「……それって、あの、明日の朝まで、先輩を独り占めしていいって、ことですか?」
    「ん、そーゆーこと」

     シシッと、先輩が歯を見せて笑った。途端、単純なわたしの身体はふわふわと軽くなる。
     ラギー先輩がひと晩中一緒にいてくれる。それも、明日の朝11時まで。一緒にお寝坊して、ちょっと遅いブランチまで堪能するのに十分な時間だ。たくさんおしゃべりして、手を握って、先輩の顔をたくさん眺めていられるんだ。
     歓喜にはしゃぐわたしの髪に指を通し、先輩はおもむろに青灰色の瞳をすっと細めた。

    「まぁたずいぶんとカワイイ言い方するッスねぇ。独り占めしたかったんスか?」
    「だ、だって先輩、いつも忙しい、から……」
    「毎日会いにきてやってたのにまだ足りないなんて、欲張りな子猫ちゃんッスねェ。はいはい、念願のラギー先輩ッスよ~」

     おどけた先輩が広げた腕の中に、躊躇いなく飛び込んだ。「うわっ」と仰け反った胸板に猫のように頬をすり寄せる。
     確かに、毎日会いに来てくれていたのにまだ足りないなんて贅沢だ。でも、どんなに与えられたって満足するはずがない。毎日来てくれるって言ったって深夜から早朝にかけての話で、ベッドを共にするとは言え大半は眠って過ごしていたし、疲れてやってくる先輩を夜更かしさせるわけにも、朝起きてすぐ風よりも早く飛び出していく背中を引き止めるわけにもいかなかった。
     それが、なんという僥倖だろう! 当分先まで運を使い果たしてしまったような気がしないでもないけれど、そんなこともラギー先輩がこうして頭を撫でてくれる感触だけでもうどうでもよくなった。
     ラギー先輩の大きな手がゆっくりと頭を撫でてくれていた。風呂上がりの髪を梳く先輩が、ふとわたしを見下ろして口を開いた。

    「グリムくんもハーツラビュルにお泊りで今日はいないんでしょ?」
    「え、知ってたんですか」
    「何で今日にしたと思ってんの。ちなみに朝も長めにもぎ取ってきたんで……今夜はゆーっくり、できるッスよ」
    「!」

     ラギー先輩が、含みを持たせた言葉をそっと耳元に流し込んできた。その裏に隠れた意味と意地悪く歪んだ先輩の眦に、かっと頬が熱くなる。硬直したわたしを抱きすくめ、ラギー先輩がわたしのこめかみに唇を寄せる。小さく鳴ったリップ音に心臓が跳ねて、わたしは慌てて先輩の胸に両手を押し当てた。

    「まっ、せんぱ、す、すとっぷ、ストップです!」
    「…何? …まさか、今日は気分じゃないとかそういうんじゃ」
    「ち、ちがくてっ……その、ココア! を、片付けて、先に歯磨きとかっ…」
    「そんなの、後からでいいでしょ」
    「虫歯が怖いって言ったのは先輩ですよ! そ、それに、そのっ……何も気にしなくていいなら、何も気にしたく、ないのでっ……」

     ぴたりと、シャツの裾から入り込んだラギー先輩の手が止まった。まつげの触れる距離で垂れ目が二度瞬いて、むぅっと眉根が寄った後、渋々といった体で大きな手のひらがシャツの中から出ていった。

    「…しゃーない。じゃあ片付けと歯磨き、一緒にするッスよ。ほら早く飲んで」
    「は、はいっ」

     ペリカンみたいにココアを一気飲みした先輩に続き、わたしも慌ててマグカップを傾ける。
     すっかり湯気の消えたココアを詰まらせないよう飲み下す。ぷはっと息を吐いたわたしの口の周りについたココアを、ラギー先輩の薄い舌がぺろりと舐め取っていった。
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