沙代とゲタ吉が水木を取り合う3Pの導入 聞き慣れたシャンソンがラジオから途切れ途切れに響いている。最近はどこに居てもシャンソンばかり耳にする。人々はこのお綺麗に並んだ歌詞の向こうに人生を見るのだそうだ。足元に堆く積まれた日本人の、日本兵の死体から、目を逸らすように。
自分は未だそんな器用な真似は出来そうになかった。ニューブリテン島の岬で弔われた、あるいは弔われる事無く川の底に沈み、海に散り、木陰で朽ち、塹壕に転がる戦友が――ふとした瞬間に、水木を戦地へと呼び戻すのだ。
「クリームソーダって色んな味があるのですね!」
呼び掛けられた凛とした声に、ぼんやりとしていた意識ふっと戻される。目の前に座る少女が、給仕から受け取ったメニューを熱心に眺めていた。水仕事とは無縁だとばかりに傷一つない指先が、文字を追うように紙の上を滑っていく。
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