えっちはない 未来生命勤務になって一か月経った頃のこと。なんとか致命的なミスを起こすこともなく、どれだけ処理しても毎日山のように積み上げられる書類を何とかさばいていた新人社員であったわたしはその日もデスクで書類を見つめていた。
体感、保険金を受け取られる人はほんの一握りだ。うちの保険会社ではかなりの大金が動く(社員の給料も含む)けれどそれは条件に合った場合に限る。条件に当てはまらない事故に保険金は下りないし、不明瞭な部分はしっかりと問い詰め……もとい調査しないといけない、あまりに疑わしくないのは逆に疑うべきであるがーー大抵の場合、嘘は社員に筒抜けになっている。相手が保険金を虚偽申告で受け取ろうとしている話ごと筒抜けになる場合もあるけれどそこでわたし達の仕事は終わり、という訳ではなくて最終的に武力で対抗しないといけなくなるケースも多い。
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