″おかえり″「ただいま」
聞き覚えのある声が聞こえ、チキチータは走って玄関に向かった。
玄関には自分の父親が立っていた。
「おとーちゃん!おかえりなさいでいス!!」
「……ただいまでいス、チキチータ」
チキチータは嬉しそうにしながら父親に抱きつき見上げた。
シャコもその様子を見て優しく微笑みながらチキチータを抱き上げた。
だが、自分の父親が至るところに包帯やガーゼがあるのを見て″また″怪我をして帰ってきたとわかりチキチータは心配そうな顔をしながら父親を見つめる。
「おとーちゃん、またお仕事で…?」
「大丈夫でいス、おとーちゃんは頑丈でいスからね」
「でも…」
ここで、仕事をしてる間にチキチータを預かってくれている父の友人が玄関にきた。
「あぁ、おかえりでいス。どうだった?」
「まぁ、なんとか…相変わらずの扱いでしたけど…」
「……そうか…」
父と友人が仕事についての話をしているらしく、チキチータはキョトンとした顔で二人の顔を交互に見ていた。
その様子に気づき、シャコは苦笑しながら頭を撫でた。
「ごめんよチキチータ、何も心配はいらないでいスよ」
「…おとーちゃん」
「ん?」
「……今日は、一緒にご飯食べたり…寝たりしたいでいス…ダメ?」
「………ダメじゃないでいスよ!今日は二人でのんびりしようでいス!!」
シャコは微笑みながらチキチータを高い高いしながら言った。
チキチータもその発言を聞き嬉しそうにした。
その後、友人の家を後にして自宅に戻ったチキチータとシャコは久々にのんびりと二人の時間を楽しく過ごした。
「……トイレ…」
チキチータが目を覚ましてトイレに行こうとしたら玄関から話し声が聞こえた。
忍足で玄関近くまで行くと、父の友人と父が玄関から出たところで話していた。
「もう、行くんでいスね…」
「あぁ、チキチータの為にも……チキチータをよろしくお願いしまあス」
そして父は、怪我が完治していない状態でまた仕事に行く為に歩き出した。
「おとーちゃん!!」
チキチータは慌てて父の元に行こうとするも、父の友人が咄嗟に抱きしめて優しくチキチータの行動を止めた。
「おとーちゃん!!おとーちゃあん!!!」
チキチータの涙がポロポロと上に上がる。
父の背中が見えなくなるまでチキチータは泣きながら父親を呼んでいた。
そして、現在…
二人は地球に訳あって住むことになった。
チキチータは″チキ太郎″という名前で人に擬態して小学校に通っている。
シャコは″辺新(ぺにい)″という名前で人に擬態し、神越市の酪農家の元でチキ太郎と住み込みさせてもらい働いている。
酪農の仕事も大変だが、前までやっていた仕事より遥かに平和でいいとシャコは思った。
「あっ、辺新さん。あとはこちらでやるから平気ですよ」
「いや、これだけやらせてください。」
「いえいえ、もう十分ですし…それに、そろそろ小学校も終わる時間帯ですから」
「…ありがとうございます。それじゃあ…」
同じ職場の女性から声をかけられ、辺新はお辞儀をして退勤させてもらった。
そして、息子が帰ってくる前に家に戻る。
数分後、元気な足音が聞こえてきて辺新は玄関前に向かった。
そして、玄関を開け優しくチキチータを出迎えた。
「おとーちゃん!ただいま!!」
「おかえり、チキチータ」