恋を知らない好きだ!コラさん、結婚してくれ。
ローの船にクルーとして乗り込んでから一ヶ月くらい経った時のことだった。
ロシナンテがトラファルガー・D・ワーテル・ローから告白を受けたのは。
久々に海上に出たポーラタング号の甲板で煙草を吸っていた所にいきなりの告白で、ロシナンテは熱に浮かされたようなローの瞳を横目にため息のように煙を深く吐き出した。
(めんどくせぇな。)
付き合ってもいないのにいきなり結婚を申し込むのは早すぎないか?、とか。
幼少期の体験が強烈すぎてなんか勘違いしちまってるんだろうな、とか。
13年も離れていたから俺への感情がなんか拗れちまってるんかな、とか。
様々なことがロシナンテの頭をよぎりつつも、
最終的に思ったのは何でそんなことを言い出しちまったんだこいつ。ということだった。
だって、そんな事をロシナンテはローの口からなんて聞きたくは無かったのだ。
海軍で諜報員として活躍していたロシナンテはある程度テクニックとして色恋を活用してきた過去があり、
男でも女でもそれなりに対応をしてきた沢山の経験や実績からしても得意な部類だった。
恋を燃え上がらせることも、終息させていくことも、利用することも、これまで何度でもやってきたことだった。
しかし、仕事を外れてプライベートでのただのロシナンテにとっては、育ってきた環境やこれまでの目標としていた兄のこともあり、恋というものは生きるために必要だとは到底思えないシロモノだった。
もう一度煙草を深く吸い込み、緊張しているローの顔にふぅ~っと煙を吹きかけてやる。
うわっなにをするんだコラさん、と咽るローの頭をわしわしと乱暴に撫でてロシナンテはニカッと笑った。
「いいぜ、まずは付き合おうぜ、ロー。」
結婚はしばらくつきあってからな!
喜びの表情を隠そうとするようにムッとした顔つきで凄い勢いでコラソンの腰元に抱きついてきたローの背中を宥めるように撫でながら、適当に盛り上げて、だんだん盛り下がらせてなんとなくそんな過去もあったな、という位のかんじに終わらせるかぁ。
そんなことをロシナンテは考えていた。