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    SueChan_Factory

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    リクエストのホムの世話を焼く新茶に顔を顰める若モリ

    解けない方程式どうしても導き出せない解がある

    時の流れというものは思っているより早いもので自分がカルデアに召喚されてから三週間が経とうとしていた。馴染んだか、馴染んでいないか、と問われれば恐らくは前者だろう。戦闘面でも己の優秀さは認められ、時々ちょっとした悪事に対してのお小言をもらうことはあるものの、特にこれといって大きな不満はない。
    そう、不満はないのだ。だが、三週間経った今でも理解出来ないことが一つだけある。

    ジェームズ・モリアーティ。
    若い自分とは対照的に老齢の姿で現界しているもう一人の自分。目指すところは違えど、いずれ超えてみせる悪。そして、宿敵シャーロック・ホームズと直接対峙し、敗れた男。
    確かに自分もジェームズ・モリアーティである以上シャーロック・ホームズという概念は強く霊基に刻み込まれ逃れることは出来ない。だが、『将来の宿敵』と『己を殺した宿敵』とでは彼に抱く感情も雲泥の差が生まれる。……はずなのだが。

    「教授、私はコーヒーで」
    「砂糖とミルクは?」
    「いらない」
    「だよネ。一応聞いただけ。おや、エミヤくん新作のスイーツ?疲れたし甘いもの食べたくない?」
    「なら一口だけもらうよ」
    「とか言って半分は食うだろ、お前」

    目の前で繰り広げられている光景に理解が追いつかない。
    食堂で老齢の自分がさっさと席に腰をおろしたホームズの代わりに、ホームズと自分二人分のコーヒーと弓兵特製の新作スイーツを注文している。
    一体どういうことだ?なぜあの男は普通に宿敵であるホームズの世話を焼いている?
    今回のようなやり取りを目撃したのはこれが初めてではない。
    これまでにも何度か、文句は言いつつ老齢の己が宿敵をあれやこれや世話をしている姿を目撃してきた。
    最初は何か意図があるのだと思い尋ねたが、返ってきた答えは「別に」
    では、手懐けようとしてなのか、と問えば「こんなんで手懐けられるなら苦労しねーヨ!」とキレられる始末。
    同じモリアーティであるはずなのに、彼の行動原理は理解しがたいものだった。

    「おや、青二才くん。なにやら難しい顔をしているネ」
    「分かっているのなら私の前でそのニヤケ面はご遠慮いただきたいのだが?」
    「ははっ!だから君はまだまだ若いのだヨ!」
    「…………」
    「まぁ、私としてはそんな君を見ているとむず痒くもあるのだがネ。ところで君も一緒にどうかな?」
    「いや、結構だ」

    言い捨てて踵を返す。
    悔しいが解はまだ出せそうにない。
    しかし必ず解いてやる。
    ジェームズ・モリアーティに解けない問題などないのだから。
    そう心に誓ってみせた。
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    SueChan_Factory

    DONE花火を見るほわか
    夏の華――今日の夕方、家に来てほしい
    端的に用件のみが書かれたメッセージを受け取ったのが今日の午後。〝来てほしい〟はいいが肝心の〝なぜ〟の部分は書かれていない。いや、敢えて書かれていないのだ。キミならこのメッセージの意図を汲みとれるだろう、とでも言いたげに。彼の言葉足らずは今に始まったことではないが、これが恋人に対して送ってくるメッセージだろうか。もっと他にあるだろう、と内心では思いつつもそれを言葉にするでなく代わりに深いため息としてジェームズ・モリアーティ青年は吐きだした。視線は手元のスマートフォンに落としつつも、机の端に置かれた卓上カレンダーに小さな印のある今日の日付を視界の隅に捉えながら。


    夏至を過ぎたとはいえ七月の終わりはまだまだ日が長い。日中の蒸し暑さを未だに残す七時よりも少し前。夕方というよりも夜と言った方がいい時間だが、燃え盛るような真っ赤な夕陽は空をオレンジ色に染め上げ、混ざり合った薄い青は徐々に紫色へとグラデーションを描いている。そんな美しい風景を少しだけぼんやりと眺めてからモリアーティは先輩兼恋人でもあるホームズの部屋のチャイムを鳴らした。
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