カルデア内にはいくつかの娯楽施設が存在している。
レクリエーションルーム、図書室、大浴場――そしてシアタールーム。
20座席ほどのシアタールームは映画館、と呼ぶにはこじんまりとしているものの、映像・音響は映画館と比べても引けを取らず、映画好きな職員やサーヴァントたちによって一晩中貸切られる、なんてこともしばしば見受けられた。
そして今夜、このシアタールームを貸し切り、独占していたのは犯罪界のナポレオン、と。皆にそう呼ばれる一人の老紳士だった。
邪魔が入らぬよう、扉には『使用中』の札を掲げ、そのまま音を立てずに扉は閉じられる。
映写室に足を運びいくつかある機材の中で彼が選んだものは最新のものではなく、年代を感じさせる一台の映写機だった。少し逡巡する様子を見せた後、手に持っていたフィルムを映写機へとセットする。
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