欠けては満ちる(暦ラン) ランガとの待ち合わせの店に向かうまでの藍色の夜空には、ぽっかりとまるい満月が浮かんでいた。東京じゃあんまり星は見えないけど、月は故郷の沖縄と同じように綺麗に見える。欠けた部分のない満月を見て、なぜだか高校生のころを思い出した。あいつがいつも隣にいて、一緒に滑って、将来はまだ見えなくても、足りないものなんてなかった日々。
そういや高二のとき、デカめのケンカをして仲直りしたのも夜だったな。
『無限に暦とスケートしたい』って言ってくれた時、心の底から嬉しかったし、それはある意味叶ってはいる。あいつがプロになって、お互い社会人としての生活がある中でも定期的に会って一緒に滑ってる。それはあの頃に思っていたような『無限』とはたぶん少し違くて、だけどその違和感は今更埋めるべきもんでもないんだろう。もう大人だし。そんなことを考えるたび心の端にチクリと小さな痛みがある。いい歳してそんなこと思ってるの、あいつには言えないけれど。
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