その雪はまだ空高くありがとうございました、と店員のかける声を背にカフェを出る。いくつかの用事を済ませ、こうしてひと息ついたら後は家に帰るだけだ。大好きな皆さんのいるあの家で、今日はどんなセクシーなことが起きるだろう。想像するだけで胸は高鳴り、自然と歩幅が大きくなる。
すると突然、進行方向にある店の扉が開く。中から誰か出てくるのだろう、ぶつからないように少し車道側に避けようとした時だった。扉の影から出てきたのは見慣れた特徴的な海のような色の髪だった。
「大瀬さんじゃないですか!」
「わあっ」
思わず声をかけると大瀬さんは驚き、肩を跳ねさせる。持っていた大きなトートバッグを落としそうになるのを慌てて抱え直しながらこちらを見上げる。
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