木場、榎木津、降旗
所用があり、木場は榎木津の探偵事務所を訪れていた。
木場が用件を伝え終わると榎木津は勢い良く立ち上がり言った。
「木場修!僕はお酒が飲みたい!!」
「礼二郎、お前には話の脈絡ってモンが無いのか」
木場は急に立ち上がった榎木津をちらと見て溜め息を吐いた。
「駄目ですよぅ、そんなもの榎木津さんに求めたって」
そう言ってケケケと笑い声を立てているのは益田だ。
「良いなぁ。僕もお酒、飲みたいですねぇ」
「五月蝿いぞ、バカオロカ。お前は事務所でお留守番だッ!」
榎木津は益田をびしっと指差し、腰に手を当てわははと大胆に笑った。
居残り宣告を受けた益田は、まぁ分かってましたけどね、と眉をハの字にしている。
「飲みって言ったってなぁ。俺は洒落た店なんて知らねえぞ」
木場は顎をさすりながら言った。
榎木津は目を細め木場の頭上辺りを見ている。するとパッと目を見開き意気揚々と言った。
「そこはどこだッ?そこが良い!良い所じゃないか!」
目が爛々としているとはこういう表情を言うのだろう。
「そこそこ言われたって分からねえよ」
「むう……」
再び目を細め木場の頭上を暫く見つめ言った。
「よし、分かったぞッ!木場修着いてこい!」
降旗は飲み屋で独り酒を煽っていた。
庶民的な雰囲気のおでんが絶品の飲み屋だ。