昼休憩中の出来事であった。
「はい、降旗先生もどうぞ」
一人の看護師が降旗のデスクの上に小花模様の可愛らしいラッピングが施されたお菓子のようなものを置いた。
「これは……?」
降旗は包みをつまみ上げると小首を傾げる。
「嫌だなぁ先生、今日はバレンタインじゃないですか。日頃の感謝の気持ちです」
「バレンタイン……今日は二月十四日ですか?」
「はい、そうですよ」
「失念していました。ありがとうございます」
常日頃から忙しく働く降旗は、毎朝日付を確認するものの、その日が何の日かまでは考える余裕が無い。
「いいえ、ホワイトデー期待してますね」
看護師の女は、声を弾ませて言った。
「考えておきます……」
降旗はぶっきらぼうに言った。
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