旅行前日ここは妖怪達が住んでる『ヨ~カイ荘』
もう夜も遅い時間であろうというこの時間に1つだけ電気がついている部屋があった。
「本当に大丈夫クリン?」
「うん。おいらに任せてよ!」
部屋にいたのはかたづ家来とぶようじん坊だ。こんな時間に2匹はいったい何をしているのだろうか?
「でも、ちょっと不安クリン…」
「そんな不安にならなくても大丈夫だよ。」
ぶようじん坊とかたづ家来が話をしてるちょうどその頃、たまたまノガッパがトイレ行くのに目が覚めて部屋の前を通りかかった。
「ん? ぶようじん坊とかたづ家来の声っす。 こんな夜遅くにいったい何をやってるんっすかね?」
こんな時間に2匹が何をやってるのか気になったノガッパは部屋の前で立ち止まる。
「もし壊れた時はどうするクリン?」
「乱暴な事はしないよ。 その時はおいらが大丈夫だって言ったから、ちゃんと責任をもって謝るよ。」
「他のみんなが寝てるという時間に一緒に部屋にいるって事は、たぶんこれは何かあるっすね…」
中の2匹に気づかれないように更に部屋へ近づいてこっそりと話の内容を聞くノガッパ。
「そこまで言うのなら、ぶようじん坊どのに責任をとって貰うクリン。」
「壊さないように気をつけるね。 だから安心しておいらに任せてよ。」
「じゃ、ぶようじん坊どのに安心して任せるクリン。」
それを聞いたかたづ家来はに任せる事にした。
「ど…どう? 入りそうクリン?」
「う~ん…ちょっと入らないなー。 もう少し入れやすくできる?」
「わかったクリン。 えーと…これでいいクリン?」
「あっ、それだけ広げればたぶん入るかも? そのまま広げておいて。」
ぶようじん坊に言われた通りにするかたづ家来。
最初は不安だったものの、ぶようじん坊が責任をとると言ってくれてたのに安心していた。
かたづ家来からすると、ぶようじん坊とは仲良しで大好きな友達だからこそ、任せられるというのもあるのかもしれない。
「あー 気になる!超気になるっす!」
一方のノガッパは扉を開けて覗きそうになったのを必死に我慢していた。
「あっ、少し入った。 このまま一気に…」
そう言ってぶようじん坊はできるだけ奥へ入れようと思って、グッと力を入れた。
「い…痛いクリン!」
「ゴ…ゴメン…かたづん。」
「こ…この流れは…もしや…」
さっきから気になる事は言ってたものの、このやりとりで一気にノガッパは変な妄想をして興奮していた。 他に誰もいないからいいものの、周りから見れば明らかに怪しい奴だ。
「しかし、ぶようじん坊もやるっすねー。 前々からかたづ家来と凄く仲がいいとは知ってたっすけど、まさかこんな関係にまでなってたっすとは…」
ぶようじん坊とかたづ家来がよく一緒にいて手を繋いだりしたり 仲良しすぎるぐらいに仲良しなのは実は他のみんなも知っている。
だが、時間が時間 部屋には2匹だけ そしてあの会話
でも、大事な事を忘れてはいけない。 2匹は同性だというのを。
「んっ…ちょっとキツイなぁ…」
「これ以上は…む…無理だクリン…」
まさかこの会話を扉の向こうでノガッパが聞いてる事なんて知らないぶようじん坊とかたづ家来の会話はどんどんエスカレートしていく。
「う~ん…後少しなんだけど…」
「…さすがに全部は入らないクリン…」
「きっと全部入るよ。 それに、ここまで入れてて今更やめるだなんて…」
「だ…だからって、ちょっと強引クリン。」
ちょっと強引なぶようじん坊を止めるかたづ家来だが、ぶようじん坊は止めなかった。
こんな中途半端で止めるのが嫌だったのだろう。
キツイ感じではあるが、それでもなんとか少しずつ入っていく。
「んっ…んっ… かたづん…中ギューギューだよ…」
「無理矢理入れるからクリン… そんな乱暴にしたら壊れるクリン…」
「おおお…いいぞもっとやれ… 壊れるぐらいまでもっと激しくやるっす…
後はこれが直接見られたら最高なんっすけど…」
ここまで来れば、この妄想はもう誰にも止められない。
ノガッパの興奮もほぼ最高レベルだった。
…と、その時
「あれ? ノガッパさんこんなとこで何をしてるんですかぁ~?」
「ま…迷い車!? (今いいとこなんっすよ!)」
突然現れた迷い車に驚くノガッパ。 さっきから変な妄想をしながらぶようじん坊とかたづ家来の会話を聞いてるとか、とても言えない。
どうやって誤魔化そうか考えてたその直後…
「これで準備はカンペキだクリン。」
「カバンが小さくて全部入れるのはちょっとキツかったよ…」
「えっ…?」
ノガッパの妄想が音を立てて一瞬にして崩れ落ちた。
「あっ、迷い車とノガッパだ。 なんか用?」
部屋の前でノガッパと迷い車が話してたのに気づいてぶようじん坊が部屋から出てきた。
「はい。 ぶようじん坊さんは明日の旅行の準備はもう終わりましたかぁ~?」
「うん。 かたづんと一緒に準備しててさっき終わったとこだよ。」
「なんとか終わったけど、ぶようじん坊どのが荷物を強引に入れるから、カバンのファスナーが壊れないか不安だったクリン…」
ちょっと前までは捉え方次第では変な誤解を招くであろう…というような感じが全開だった会話をしていたぶようじん坊とかたづ家来。
「…………。」
「あれ? ノガッパどうしたの?」
「あっ…これは何をしてるのか気になってこっそりと聞いてたら、思ってたのと全然違ってガッカリしたんですねぇ~。」
(ドキッ)
隠してたノガッパだが、迷い車にはバレバレだった。
「なるほど…でもおいら達そんな変な会話してたかな~?」
「う~ん… 別に変な会話なんてしてなかったと思うクリン。」
「いやいや 君たちかなりしてたっすよ!」
どうやらぶようじん坊とかたづ家来には全く自覚はなかったようだ。
「まぁ…そんな事はどうでもいいや。」
「明日の旅行が楽しみだクリン。」
「そういえば、ノガッパさんはもう荷物の準備は終わってますかぁ~? 」
「荷物? 準備? ああー! そういえば明日はみんなで旅行に行くんだったっすー!
やっべー ま…まだ終わってないっすー!準備…早く済ませないとヤバイっすー!」
変な妄想ばっかりしてて明日の事をすっかり忘れていたノガッパは急いで部屋へ戻って行った。
「ノガッパは相変わらずのんびりしてますね… それでは、私も部屋に戻ります。 ぶようじん坊さんとかたづ家来さんおやすみなさい。 」
「おやすみ!」
「おやすみクリン。」
ヨ~カイ荘は今日も平和なのであった。
ーおわりー
***
今回はちょっとギリギリ?を攻めてみた。
念のために書いておきますが…
・入る 入らない言ってたのは荷物
・広げてたのはカバンの口
・途中で痛いと言ってたのは強引に荷物を入れた時にうっかり指をはさんでしまったから
・キツイと言ってたのは荷物を入れすぎてパンパンになったカバンのファスナーを閉じるのが
…です。
荷物は同じ部屋の妖怪2匹で1つのカバンに詰めてたので、パンパンになってしまってたというわけ。