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    oji_oji_n

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    oji_oji_n

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    5000字くらい。
    ただただ🌟を甘やかす🎈が書きたい~と思いつつ、書くのが難しくなってしまったので供養です。
    導入+映画館でのデートのみです。ド健全です。続きは書けたら書きます。

    🎈が🌟を甘やかそうとするだけ 司くんは、僕のことを甘やかしすぎだと思う。

     僕の隣で、野菜サンドを頬張る司くんを横目に、彼の言動を思い返す。僕が学校で爆発をさせて先生に追いかけられる時も、一緒になって追いかけられてくれる。ファミレスで、ハンバーグに付いている野菜を渋々ではあるけれど食べてくれる。徹夜をして眠い時、膝を貸してくれたり、眠るまで背中をぽんぽんと優しく叩いてくれたり。意味もなく甘えたくなって台本を読んでいる司くんに寄りかかったら、台本から手を離して僕をぎゅっと抱きしめ、可愛いなと頭を撫でてきたり。恋人としての営みの最中だって、何かと甘やかされてばかりだ。
     一緒に過ごす時間が増えるにつれ、僕自身、甘やかされる様に振る舞っている節もあるけれど……それにしても……。

    「やっぱり、司くんは僕を甘やかしすぎだと思うんだよねぇ」
    「ん……? 突然なんだ? やっと野菜サンドを食べる気になったか?」
    「いやそれは絶対にありえないよ」
    「そんなに即答しなくてもいいだろう!?というか、自分で食べないものを買うんじゃない!!」

     司くんの大きな声が、僕たちのいる屋上だけでなく、校内全体に響き渡る。木に止まっていた小鳥たちが驚いて、羽ばたいていってしまった。驚かせてしまってすまないね。
     野菜サンドの最後の一口を食べきった司くんが、僕に何か言いたげな視線を寄越すので、お説教が始まってしまう前に、疑問に思っていたことを投げかけた。

    「僕はよく司くんに甘えてしまうけれど……司くんはあまり、僕に甘えたりしないよね」
    「いや、そんなことはないはずだが……演技についてのアドバイスもそうだが、勉強など、結構類に頼ってしまうことも多いからな」
    「頼る、かぁ……けれどそれは、甘えるとは少し違うんじゃないかい?」
    「むぅ……難しいな……」

     甘える、甘える、と難しい顔をして呟き考え込む彼を見て、僕も顎に手を当て思考を巡らせる。週末の日程、ショーのスケジュール、僕と司くんの予定……学校の定期テストなんかはまだしばらく先のはずだから……うん。今週の土曜日は、司くんに予定が入っていなければ比較的自由に過ごせるはずだ。そこまで考えたところで、一つ提案をもちかける。

    「司くん、僕に甘やかされてみないかい?金曜日、学校が終わったらデートしようよ」
    「突然だな!?金曜の放課後は……何も予定が無いから構わんが……」
    「なら、決定だね。この日は、司くんのやりたいことを思いっきりやろう。金曜は親も仕事で帰ってこれないと言っていたから、よければ泊っていってほしいな」

     休日、親のいない恋人の家に二人きり……健全な男子高校生である司くんは顔を赤くした。実際そういうつもりで誘っているのだけど、彼のピュアな反応を見ると僕まで少し照れてしまうな。

    「ほら、司くん。何かやりたいことはないかい?……もちろん、えっちなことでもいいよ」
    「ッ!?!?っちな、こと……は、破廉恥だぞ……!?まだ昼間だというのに……!!」

     昼間じゃなければいいのかな、なんて返したら困らせてしまいそうだから今は黙っているけど、彼の反応が面白くてにやにやしながら眺めていると、あまり揶揄うなと怒られてしまった。結局怒られてしまったなぁ、とこれまた面白がっていると、しばらくやりたいことを考えていた司くんが口を開いた。

    「久しぶりのデートだからな。やりたいことが多すぎて選べんのだが……類は、何かやりたいことや行きたい所はないのか?」
    「僕のことはいいんだよ。強いて言うなら……司くんのやりたいことが、僕のやりたいことかな」

     僕がそう言うと、司くんはまた考え込んでしまった。突然の提案で困らせてしまったかな。望みがすぐに思いつかないのであれば、僕が色々とプランを考えようかと思った矢先、彼がようやく口を開いた。

    「類が良ければだが、金曜日はミュージカル映画を見に行きたいな」
    「あぁ、この前言っていた映画かい?」
    「そうだ。近頃は本当に忙しかったからな、まだ見に行けていなかったんだ」
    「では、映画館に行こうか。他に何か要望はあるかい?」

     僕の問いかけに対して司くんは、映画を見た後にゆっくり語り合いたい、咲希君が言っていた期間限定のパフェを食べたい、といくつか要望を言ってくれたが、どれもすぐに叶えられそうなものだった。
     司くんのやりたいことを聞いたのは僕だから、司くんがそれでいいならいいんだけどね。僕は彼の要望の範囲で、たっぷり甘やかしてみせるだけなのだから。

    「とまぁ、オレの要望は以上だ」
    「うん?本当にこれだけでいいのかい?この予定だと、金曜日に全て済んでしまいそうだねぇ」
    「……あぁ、いや。すまん。以上だと言ったが、厳密にはもう一つあるな」

     首を傾げる僕を見て、司くんがひとつ咳払いをした。彼の頬が、少し赤くなっている。

    「後の時間は、お前と二人きりでゆっくりしたい」

     二人で、ゆっくり。恋人の口から出た遠回しなお誘いを聞いて、今度は僕の顔が赤くなる番だった。いや、えっちなことでもいいと言ったのは僕だけれど……あの司くんがまさか、ここでそんなお願いをしてくるなんて。思ってもみない返答に狼狽える僕を見て、司くんがハッと目を見開く。

    「る、類、ちがっ……違うぞ!?決していやらしいことを想像しているわけではないぞ!?言葉通り!!言葉通り、二人でゆっくり、だな……!!」
    「言葉通り、二人でゆっくり……ねぇ……?」

     最近はお互い忙しくて、なかなか恋人としての時間を取れていなかったからね。司くんはきっと純粋に、僕と二人きりの時間を過ごしたいと思ってくれての発言だったのだろう。それは分かっているけれど、顔を茹でダコのように真っ赤にしてあれこれ言い訳をする彼が面白くて、つい意地悪な返しをしてしまう。
     別に、いやらしいことを想像してくれてもいいのになぁ、と声には出さずに考えていると、今まで慌てふためいていた司くんが少し大人しくなった。じっと僕を見つめて、何か言いたそうにしているけれど……。どうしたんだい、と僕が声をかける前に、司くんが声を出した。

    「…………ぇ、っちなことも、していいのか?」
    「えっ……」
    「お前が嫌なら、しないが……」

     聞こえるはずのない爆発音が、脳内に鳴り響く。言ってから気まずくなってしまったのか、司くんが僕から視線を外して、上品な口元を手の甲で隠してしまってる。彼は今、何と言った?えっちなこともしていいのか?だって?そんなの……

    「いいに、決まってるじゃないか」
    「そっ……そうか。ありがとう」

     司くんの珍しく小さな声が、昼休みの終了を告げるチャイムに掻き消される。二人の間に流れているむず痒い空気を感じながら、急いでそれぞれの教室に戻った。
     席について授業が始まってからも、僕の脳は切り替えができず、先程の司くんのことをずっと思い返していた。

    『えっちなことも、していいのか?』

     心配になるくらい顔を赤く染め、僕を見上げる司くん。もう何度か体を繋げているというのに、未だに初心な反応をするのが可愛くて、胸がキュンとなる。
     一体どんなえっちなことを所望されるんだろう。案外独占欲の強い彼のことだ、今まで我慢していた分、もしかしたら身体中にキスマークや噛み跡なんかをたくさん付けられてしまうかも。緊縛やコスプレなんかも……いや、それは僕のやりたいことだね。今回は司くんのやりたいことを最優先に、彼を甘やかすって決めてるんだから。
     週末が楽しみだな……♡と別の箇所までキュンとしてしまう体を抑え、先生の授業をBGMに、数日後のデートに思いを馳せた。





     待ちに待った金曜日の放課後。久しぶりのデートが楽しみで、学校にいる間中落ち着かず、ずっとそわそわしてしまった。上演前にお手洗いに向かった司くんを待っている間に、予約していたチケットを発券して、ついでにポップコーンと飲み物を買っておく。
     これから始まる映画に胸を躍らせるお客さんを眺めながら映画館前の椅子に座っていると、程なくして司くんが戻ってきた。

    「すまない、待たせたな……って、もう飲み物まで買ってくれたのか!早いな!全部でいくらだ?映画が始まる前に返しておこう」

     司くんがバッグから財布を取り出してお金を渡そうとしてくる。そういう、金銭的な部分でもしっかりしているところは素敵だけれど……今日だけは、その財布を鞄にしまってもらわなくては。

    「その必要は無いよ。今日は僕に甘やかされて欲しいと言っただろう?」
    「む。いや、しかし……」
    「いいからいいから。どうしても気になるなら、次のデートで僕を甘やかすのに使って欲しいな」

     頑なに受け取る姿勢を見せない僕に根負けして、ようやく司くんが財布をバッグにしまってくれた。そうこうしているうちに、開場時間を告げるアナウンスが流れ始めたので揃って移動する。
     予約していた席は、少し後ろの真ん中。画面全体を悠々と見渡すことのできる席だ。司くんの見たいと言っていた映画は、公開されてから日が経っていたので、予約人数もかなり減ってきており、希望の座席を難なく予約することができた。見たところ、この時間の映画を観る人たちはみんな前の方の席に座るようで、後ろの方に座るのは僕たち二人だけだった。予約席に着いて、飲み物の位置を調整する。ポップコーンは司くんが取りやすい位置に置いた。まだ人も疎で、僕たち以外には三組か四組程度しか座席に着いていない。
    スクリーンには近日公開予定の映画のCMが流れており、どれも面白そうで興味をそそられる。それは司くんも同じようで、CMを見て気になったものがあると公開日をチェックしていた。その中のどれかを、また一緒に見られたらいいな。
     ちらちらと司くんの横顔を見ていると、彼がポップコーンを口に放り込んだ。丸い頬が咀嚼に合わせてふわふわと動くのが、なんだか小動物のようで可愛らしい。こんなに可愛らしいのに、予告を見つめる瞳は真面目そのもので、思わずくすりと笑ってしまう。

    「うん……?どうした?」
    「ううん、なんでもないよ。僕のことは気にせず、沢山食べてほしいな」
    「いやそんな見られていると食べずら……んむ……!」

     食べる手を止めてしまった彼の代わりに、僕が司くんの口元にポップコーンを一粒摘んで持っていく。驚いて開いた口にそのまま押し込んでやると、何の抵抗もせずにそのまま飲み込んでしまった。
     暗い館内でも分かる程に顔を赤くして、口をパクパクさせる司くんを見て、また一つ、もう一つ口に放り込む。それも口に吸い込まれたところで、司くんが僕の手を掴み、小声で抗議してきた。

    「ぉ、お前、突然なんだ……!?」
    「うん?特に理由はないよ?二回目以降は口をパクパクさせていたから、もっと欲しいのかと思って」
    「オレは魚じゃないぞ?」

     他の人に迷惑がかからないよう、小さな声でひそひそ話すから、いつもより顔が近くてくすぐったい。掴まれていない方の手で懲りずにポップコーンを持っていく。

    「司くん。はい……あーん」
    「い、いや……自分で食べれ……」
    「あーん」

     観念したように、僕の手からポップコーンを食べてくれた。指先に司くんの唇が当たって心臓が跳ねたが、彼に気付かれていないだろうか。
     やっと司くんが手を離してくれたので、僕も自分の口にポップコーンを運ぶ。口に放り込む時にわざと指先を唇に押し当てて、先程の彼の柔らかさを思い出す。……間接キスだ。今更間接キスで照れたりはしないけれど、たまにはこういうのも良いものだね。

    「なんだか僕たち……すっごくラブラブな恋人みたいだねぇ?」
    「……実際、その通りだろ?」

     直後、辺りが薄暗くなる。もうすぐ上演時間らしい。隣に向けていた視線を前に戻して、映画の上映を待つ。
     暗い館内に上映中の注意事項が流れているのをぼんやり眺めていると、隣で司くんがもぞ、と動いた気配がする。どうしたのだろう。ドリンクの飲み過ぎで早速お手洗いかな?なんて思っていると、急に手を握られた。
     いや、流石の僕も上映中にまでポップコーンを食べさせるつもりはないんだけれど。悪ふざけが過ぎたかな。どうしようかと一人考えていると、掴まれた手の隙間からゆっくりと司くんの指が入ってきて、互いの指と指を絡め合うように握られる。
     恋人繋ぎだ。理解した瞬間、自分の顔が赤くなっていくのが分かった。横目で司くんを見ると、彼もしてやったりと満足げな顔でこちらを見ていた。もう……これじゃあ、ポップコーンが食べずらいじゃないか。
     司くんの手をぎゅっと握り返したところで、映画が始まった。……僕、手汗大丈夫かな。少し心配になったけれど、司くんの手のひらの方が熱くて湿っていたから、どうでもよくなってしまった。
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