ドラゴンの肉は美味しいらしい。「おい、これ」
「バイヤーだね、これは」
「とりあえず次の寄港地はこれで決まったな」
「えぇ？ジーマーで言っちゃってんの？千空ちゃん」
「じーまーだ。おい、チェルシー」
「何、何？今度はどこ行っちゃう？」
地図を広げた千空。
「コモドドラゴンの生息地ってどの辺りだ？」

「メンタリストのお代にしちゃあ、やっすいな、おい」光を弾くガラスの容器を、子供のようにはしゃいだ男が陽に透かせている。
中の液体は飲み切ってしまった。
蝙蝠男の頑張りに科学屋少年が作ってくれた。
小さな幸せを噛み締める。
もう二度と味わえないと思ったコーラ。
数千年前の味は忘れてしまったけれど。今はこの味こそがゲンのコーラだ。

不器用なマジシャン君の瞳が言葉よりも雄弁に恋心を叫んでいるのに、オレはどうしようもなく後悔に苛まれるのだ。どう考えても不合理だから、彼が自覚する前にオレは千空ちゃんの生まれたての恋心を握りつぶした。彼にはもっと相応しい人が現れるのだからと、幾度も自分に言い聞かせた。自分の心は簡単に操作出来るから。

「させねぇって、かっこいいね」「うっせぇーわ」ゲンは岐路に立たされている。
此処が分水嶺ということか。
差し出された手を取れば、まだ一緒にいることを許される？こんな俺でも？
「まぁーた、ぐちぐち考えてんだろ。いいから来い」
ゲンの躊躇を飛び越えて掴まれた手首。
「後悔なんてさせねぇ。来いよ、ゲン」
滅多に呼ばれない名に頷く。