午睡 分厚い鉄の門を潜った君は、とても小さくなって戻ってきた。
ちょっと前まで君の腕を枕にしていたのに、今の君は僕の腕の中にすっぽりと収まっている。好奇心旺盛で落ち着きのなかった君とは思えないくらい、大人しくしていて、なんだか実感が湧かない。
そんな君は、僕の家に帰ってくると、家の中でいちばん日当たりのいいところに落ち着いた。君はここで昼寝をするのが好きだものね。ここ数日は慌ただしかったけれど、これからはここでゆっくり寝るといいと思うよ。
君の隣に座って、僕は淹れたてのコーヒーを飲む。コーヒーは豆から挽きたいと言ったのは君だった。道具をそろえたのも君だ。それなのに毎朝ごりごりとミルを挽き、ペーパーフィルターに入れて、上から熱湯を一すじ注いでコーヒーを淹れるのは、僕の役目だった。なぜだろう。君はダイニングの椅子に座って、年甲斐もなく足をぷらぷらと揺らして、僕がコーヒーを淹れるのを眺めているばかりだった。豆から挽きたいと言ったのは、君じゃなかったのか。
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