「鋼くんとカゲ、順調にお付き合いしてるみたいだよ」
高校時代の生徒会長の結婚式に呼ばれ、同じテーブルを囲んだ犬飼が発した台詞には衝撃を受けた。内容もさることながら、一番の衝撃は当人達の口からよりも先にこの場で事態を知ったこと。顔に出ていたのか、意外そうに笑いながらも犬飼はわからないでもないといった様子だ。人差し指を顔の横で揺らして愛想のいい様相を崩さずにいる。
「鋼くんの一人暮らしに便乗してカゲも一人暮らし始めたのは聞いたでしょ」
「それは聞いた」
「近所に住み始めて、なんか流れでそうなったみたい」
「なんだよ流れって」
「まあまあ。あの二人なりの付き合い方って話だよ」
やけに微笑ましげな様子は、荒船の解釈する付き合いと定義が少し違うからということらしい。できるだけ静かにと置いたはずの食器の音がやけに耳に響いた。
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