人のことを言えないくらい、自分も大概馬鹿だと思う。
頭で考えるより先に、体が動いていた。
彼を押しのけると同時に腹部に走る激痛。バランスを保てなくてその場に倒れ込む。血が流れていく。
「樹……!!」
叫ぶような青斗の声。よかった、怪我は無いらしい。
視界が霞んで、意識が遠のいていくけれど、青斗が無事なことがわかって安心した。
裏切って、傷つけて、なのに結局守ろうとして。自分勝手にもほどがある。
好きだった。大切だった。傷つけることを恐れるくらいに。
伝えることはできないけど、この感情は紛れもなく本物だ。
ありがとう。ごめんね。せめてそれくらい伝えたかった。でももう、無理かもしれない。
意識が闇に引きずり込まれる。自分がどうなるかはわからないけど、今後の彼がどうか幸せでありますように。