通るべからず陽の届かないこの町では昼夜というものはあまり感じられない。そのためかこういった通り、所謂風俗街と呼ばれるようなところは何時だって人がいた。こんな町では大人の娯楽といえばこれくらいなのだろう。
金銭感覚の狂いやすいこの場所を、サンポはよく狩場にしていた。
鼻歌を歌いながら路地を抜け、横目で人々を観察しながら歩く。客寄せをする嬢、怒鳴りつける男、金が支払えなかったのか暴力を振るわれている鉱夫。混沌としたこの街の雰囲気は嫌いでは無い、勿論自身に火の粉が振りかからなければ。
そんなことを考えながら歩みを進めていればくん、っと服を引かれる。
「やっぱりサンポだった。」
「……おや!これはこれは、奇遇ですねえこんなところで!」
本当に、なんでこんなところにいるんだこの少女は。
目の前の彼女、星は平然とした 普段の表情の読めない瞳でこちらを見上げると、「青い髪…間違えた、ネイビーブルーの髪が見えたから声掛けたんだけど、合ってたね。」なんて言いなが歩みを再開しようとしている。……いや、少し待って欲しい。
「ええと、お姉さんはなんでこちらに?こちらの通りに何か用でしたか?それであればこのサンポ、道案内を致しましょう!」
「平気。ここの路地がほかの町への近道になるって聞いたからたまに通ってるんだ。だから大丈夫。」
これが一度目ではなかったのか。
思わず呆れた顔になるのを自慢の表情筋で支えきる。こんなところを何度も彷徨く少女など、そういう目的と取られてもおかしくないというのに。……まぁ、この浮世離れした少女にそんな感覚が通用するとはハナから思ってはいないし、万が一襲われたとして反撃は容易だろう。しかしそれにしても、だ。
「……星さん、ここがどういう通りか知ってます?」
「何かを売ってるのはわかるよ、私もいくらか聞かれた。その時は売れるようなもの持っていなかったけど。機械集落のオークションみたいなものかな?」
淡々と爆弾を投下する彼女に頭を抱えたくなった。教えるべきか、否か。正直親切にしたとてこちらに利益がある訳では無い、が。