チェリーとエンジェルは友達だ。友達だから、セックスクラブのバーカウンターで、他人には言えない日々の愚痴を吐き出す会が定期的に行われている。
今日も例外ではなく、二人は響く重低音と喧騒の中、酒を片手に話をしていた。
ただ、チェリーは最近、エンジェルとの会話がつまらなかった。
その理由は至って単純で、彼の話がとある人物のことばかりだからである。
「でさぁ〜その時ハスクのやつ、どうしたと思う?」
またこの類の話か、と思いながら、チェリーは酒を喉に流し込んだ。
「さぁ、どうしたんだろうね。おい、もう一杯」
空のグラスを掲げてバーテンダーに声をかければ、目の前に新しいグラスが置かれる。これで5杯目だ。
対するエンジェルは、ずっとグラスの縁を指でなぞったり、掲げてゆらゆらと揺らしていたりするだけで、まだ1杯目だった。
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