砂漠に咲く花 初めて彼に会った時、やけに真っすぐ見てくる瞳だったのをヴァッシュは覚えている。己を一目でヴァッシュ・ザ・スタンピードだと見抜いた彼の目には最初こそ驚きの感情があったものの、嫌悪からでもなく、かといって好奇心からでもない、温度のある優しい眼差しでこちらを見つめていた。
「人生悪いコトばっかじゃないねんなあ」
ロストジュライを引き起こしてから。この首に法外な懸賞金が掛けられてから。
悪意も他意もない声で迎えられたのは久しぶりだった。その声色がそのまま彩られ、形になったような優しい目で真っすぐ見据えられたのはもっと久しぶりだった。決して広くはない車内のなか、大ぶりな握手に全身が揺れたがその揺らぎにヴァッシュの感情は静かに全身へ広がり、そして沈殿していった。
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