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    こはく

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    こはく

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    雰囲気ピスジン小説です

    #ピスジン

    メフィスト誘われた当初、月の光を溜め込んだような銀髪の男は、ピスコの言葉を一笑に付してみせた。おまえの表の顔に丁度いい相手がいるだろうと。枡山憲三として得た女性のことだろうとすぐにわかった。彼女よりもおまえと行きたい。彼女には、友人との小旅行をプレゼントしてある。ジンのことは、会社の人間に重要な取引先になるかもしれない企業の取締役で。お互いのことを知るために、プライベートで会うことになったと伝えてある。

    ジンは、半ば無自覚に必死にジンを誘うピスコを軽く嘲笑ってみせた。そして、さらに面白いものを見ようとでもいうのか。そこまで必死になったということは、余程面白いものを用意しているんだろうな?と尋ねてきた。

    食いついてきたジンに高揚感を感じながら、演目とともに観劇に行くということを用意しておいた伝える。するとジンは、先程の態度とは打って変わってピスコの誘いを受けると応えた。その時のジンは、何故かピスコの持つチケットと彼の顔を交互に見ながら異様なほど楽しそうにしていた。まるで、プレゼントを目の前にした子どものように。

    米花町にあるホールで上演されるその演目は、古典劇を現代風にアレンジしたものらしく。大袈裟な言葉でポスターを飾り立てられていた。

    ひとりの男が、自らの欲望のために魂と引き換えに悪魔と契約する。男は、約束の間際まで彼が欲しかったものを手に入れ続ける。地位も、名誉も、賞賛も。男は何もかも手に入れたかのように思っていた。かつて悪魔とした契約を忘れてしまうぐらいに。だが、無情にもそのときは訪れる。


    火に包まれた酒蔵で、ピスコはジンにベレッタの銃口を突き付けられていた。なんの真似だ、自分を殺せば重要な情報に辿り着けなくなる。そう言って命乞いをするピスコにジンは、かつてピスコに観劇に誘われた日と同じ表情で彼を見ながら。

    「もう十分良い夢を見ただろう」

    そう言った。
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