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    kimagure3pun

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    kimagure3pun

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    【現パロ/グラシエ】
    ご近所(家族)パロです。グラジタとシエテさんが一緒に住んでます。
    最初の話が8歳と20歳ぐらいの二人で、後半が15歳と27歳です。
    パロ本作りたくて設定考えてたら小説になってました。

    ▼メモ絵
    https://poipiku.com/8152/10637854.html

    #グラシエ
    glacier
    ##グラシエ
    ##小説

    近所のお兄さんシエテは物心ついた頃から一緒にいる”近所のお兄さん”だ。
    血のつながった家族というわけではないが、父親が家を空けていることが多いグラン達にとって彼は家族のような存在だった。

    12歳年上のお兄さん。グランの中でのシエテはそんな立ち位置だ。
    強くて、優しくて、料理上手で、裁縫だって出来る。
    出来ないことなんてない、まさに”理想のお兄さん”であった。

    「ジータちゃん!グランちゃん!今日は何食べたい~?」
    「わたしオムライスとハンバーグとエビフライ!」
    「ジータちゃんは食べたいものがいっぱいだね~グランちゃんはー?」
    「ぼくは…ジータといっしょでいい…」
    「そー?じゃあ…今日はお兄さん特製お子様ランチにしよっかな~!」

    シエテに手を繋がれて歩くジータとグランは、傍から見れば仲のいい”3人きょうだい”に見えるだろう。
    グランとジータでさえ、シエテの事を自分たちの”お兄ちゃん”だと思い込んでいたほどなのだから。

    ふたりがまだ保育園に通っていた頃の話だ。
    シエテが夜になると家から出て行ってしまうのを毎日不思議に思っていた。お兄ちゃんが出て行くのに父親は何も言わない。シエテ本人に「どうして出ていくの?」と尋ねると「自分の家に帰るんだよ」と言われ、混乱して二人で大泣きした覚えがある。

    昔から近い距離にシエテという存在が二人の間にあった。それこそ、家族だと錯覚するほどに。放任主義の父親は、グラン達がある程度大きくなると海外を飛び回り、家に帰ってくるのも盆と正月ぐらいだ。シエテがいつでも傍にいたので、寂しいという感情も特になかったが、特殊な家庭なんだろうなという認識は子供ながらにあった。

    「ふたりとも、学校は楽しい?」
    「うん!たのしいよ~!わたしとび箱が上手だって褒められた!」
    「そっかそっか~ジータちゃんは運動得意だもんね」
    「グランも足早いって褒められてたよ!」
    「お!そうなんだ!確かにグランちゃんって昔からかけっこ早かったもんねー」
    「ふつうだよ…」
    「ふふ…グランちゃんはシャイだねー」
    「シャイってなにー?」
    「んーと…恥ずかしがり屋さんってことかな~?」
    「恥ずかしがり屋じゃない…!!」
    「あはは!グランが照れてる~」
    「もージータまで…」

    晩御飯の買い物が終われば、シエテは当たり前のようにグランとジータの家へ向かう。
    帰る場所がグラン達の家とは別にあるというだけで、ほとんど一緒に暮らしているようなものだった。
    グラン達は、シエテの本当の家に一度だけお邪魔したことがある。シエテの家はグラン達の家から歩いてすぐの所にある普通の一軒家だ。静かで彼らしいきれいな家。
    彼の家族は誰もおらず、「お父さんたちは今いないの?」と尋ねると、シエテは少し考えた後に「そうだよ」と優しく微笑んだ。
    その時はたまたま居なかったのだろうとグラン達は気にもしなかったが、今思うとそうではなかったのかもしれない。
    二人はシエテの家庭の事情を詳しく聞いたことがなかった。ジータは聞きたそうにしていたが、グランがそっと止めたのだ。
    本人があまり話したくなさそうだったのと、家族の話題になるとなんとも儚げに笑うものだから聞きにくかった。

    本当の家に帰る時、シエテはいつも寂しそうな顔をしていた。そんな彼の様子をみてジータがついに「シエテもここに住めば?」と声をかけた。
    最初こそ驚いた顔をしていたシエテだったが少し悩んだあとに「迷惑じゃない?」と聞いてきた。あまりにもトンチンカンな返事に、ジータの機嫌がみるみる落ちて暫く大変だったのがつい最近の事だ。

    シエテが一緒に住むことに対してグラン達の父親が反対するわけもなく、同居のような形に落ち着いて今に至る。シエテの本当の家はそのままに…。

    本音を言えば、ジータが切り出してくれなければグランが声をかけていたかもしれない。シエテがいるから寂しくないようなもので、彼が帰った後の二人っきりの家は何とも寂しいものだったから。

    もうすぐ小学校高学年になるとはいえ、グラン達はまだまだ子供で甘えたい年頃だ。それ故に、年上のお兄さんという存在は何とも大きいものだった。
    ジータは相変わらず、シエテに思ったことをぶつけて甘えているが、グランはどことなく遠慮してしまっていた。
    そんなグランの事を当然シエテは気づいており、ジータが寝た後にこっそり甘やかしてくれた。そんな自分だけに与えられた時間がグランにとって特別だった。

    「ジータちゃんは寝るのが早いねぇ」
    「食べてお風呂入ったらすぐ寝ちゃうよね」
    「うーん!健康健康!寝る子は育つっていうしね~」
    「でも早すぎない?まだ8時にもなってないよ?」
    「そー?昔からよく寝る子だったしなぁ…あ、グランちゃんは全然寝ない子だったね?」
    「いつの話してるの…」
    「ふふ…グランちゃんは変わらないねーあんまり夜更かししちゃだめだよ?」
    「眠くなったら寝る……」
    「ダメダメ~習慣づけなきゃ!9時半には寝て7時前には起きなきゃね」
    「眠くないんだもん…」
    「じゃあ今日はお兄さんと一緒にお風呂入って寝よっか?」
    「うん…」
    「よし!じゃあレッツゴー!」

    シエテにふわりと抱き上げられてお風呂場に向かう。お互いの背中を洗い流し、シエテの腕にすっぽりとおさまって一緒の湯舟に浸かる。
    お湯とシエテの温かさでウトウトと眠気がきているグランをみて、シエテはそっと微笑みながら小さな頭を優しく撫でる。

    「グランちゃんはあんまりワガママ言わないよね?」
    「んー……」
    「もっといっぱい甘えていいんだよ?」
    「ジータの方が…いっぱい甘えたいと思うから…」
    「お兄さん、二人に甘えてほしいんだけどなー」
    「ぼくは…おにいちゃんだし……」
    「ふふ…そっか…グランちゃんはいいお兄ちゃんだね」
    「んー…」
    「じゃあ!二人っきりの時は、俺が好き勝手グランちゃんのこと可愛がっちゃうねー!」

    後ろからグランを思いっきり抱きしめたシエテは、ぐりぐりと小さい頭に頬ずりをする。頭をわさわさと揺さぶられながら「やめて~」と嫌がるグランの声は心なしか弾んでいた。

    お風呂で温まったあとは二人で同じベッドにはいる。
    シエテとはこうして一緒に寝ることがよくあった。グラン達が起きる前にシエテが朝ごはんの用意をしてくれるので、起きたとき隣は当然もぬけの殻。目覚めた際にシエテが隣にいないことを寂しく思うこともあったが、こうして一緒に眠ってくれる時間がグランは好きだった。

    「おやすみグランちゃん」
    「おやすみ…シエテ…」

    彼の大きな腕に優しく抱きしめられれば、すぐに眠りに落ちる。
    シエテの事が好きだ。
    妹のジータもシエテの事を慕っているが、ジータがシエテに向ける”好き”と自分がシエテに向ける”好き”が同じであるのかグランは測りかねていた。

    シエテはグラン達にとって特別な人。でも、それとは別に”自分だけ”の特別になってほしいとグランは思っていた。
    こうして一緒に眠ること自体が、グランにとってシエテに出来る”ワガママ”であり”甘え”であったのだが、シエテはきっとそうは捉えていないだろう。それがなんだかむずがゆく、切なくなるのが恋心だと気づくのはそれから暫くしてから……。


    「初恋は叶わないって言うよね」
    「どうしたの急に」

    中学生になり、恋心や恋愛話に興味が出てきたジータは、少女漫画や友達から得た知識をこうしてグランに語ってくることが増えた。

    「別に~?叶う初恋だってあるよね?って思っただけ」
    「少女漫画的にはどうなの?」
    「半々で叶ってる!」
    「じゃあ叶うんじゃない?」
    「も~!もっと真剣に考えてよ~!グランだって初恋の経験あるでしょ?」
    「ジータはいつだって話が急すぎるんだよ」

    初恋の話題はどうにも苦手だと、グランは手元の雑誌を見つめる。

    「そういえばグランの初恋って誰なの?」
    「…別に誰だっていいだろ」
    「あ~!いるんだー?だれだれ!私の知ってる人?」
    「教えません~」
    「ケチ!ケチ!」
    「そういうジータは誰なのさ」
    「私?んー誰だろ……初恋の相手になりやすいのって近所の幼馴染とかそういうのだけど…」
    「……シエテとか?」
    「シエテ?ないない~家族みたいなものだし、考えたことないな。でも確かにポジション的には初恋になりやすいのかも?」
    「少女漫画脳……」
    「私って初恋まだなのかも…!」
    「そうだろうねー」

    その後も初恋の相手をジータにしつこく問いただされたグランだったが、別の話題を出せば追及することにも飽きたのか質問してることもなくなった。

    ジータに”初恋の相手は誰?”と聞かれたとき、グランが真っ先に思い浮かべたのがシエテだ。初恋もそうだが、現在進行形で彼に恋をしている最中でもあった。
    中学にあがってシエテとの距離を改めて認識したグランは、この感情が恋愛感情だと気づいた。そして絶望に似た感情を抱え続けていた。

    一度だけ、感情が先走りしすぎてシエテに告白したことがあった。

    「シエテが好きだ」

    ひねりもないシンプルな告白。
    口に出した後にしまった…!と思ったが、発した言葉が消えるはずもなく大人しく彼の返答を待つ。ドキドキとした感情を隠しながらシエテの表情を伺えば「俺もグランちゃんが好きだよ」と一言。

    その時にグランは自分の恋心が砕け散る音を聞いたのだった。

    初恋は叶わない。あながち間違えではないのかもしれない。
    それでもグランの想い人は残酷なもので、「一緒に寝よう」だの「お風呂に入ろう」だの、小学生の時と同じ距離感でスキンシップを図ってくる。
    これにはグランも些か参った。断りたくはないが、距離感が近ければ近いほどにグラン自身が辛くなる。
    それとなく理由をつけて避けていたが、目に見えてシエテが落ち込むものだから心臓がずきずきと痛んだ。


    あれからシエテとは長いこと一緒に暮らしてはいるが、彼の仕事やグラン達の学校行事のタイミングなども重なって、三人そろっての時間はあまり取れなくなってきていた。
    それにどこかほっとしながら、帰宅が深夜になろうとも、この家に必ず帰ってきてくれることにいつも安堵していた。

    「グランおやすみー」
    「おやすみ」

    ジータは中学生になっても相変わらず寝るのが早い。9時には寝てしまうので帰りが遅いシエテとは朝ぐらいしか顔を合わせる機会がないように思う。
    グランは相変わらず寝れるときに寝る…のスタンスで日常を過ごしていた。そのため、ジータからシエテ宛てに伝言を頼まれることも多かったのだが今日は特になかったようだ。

    「僕も部屋に戻るか…」

    そろそろシエテが帰ってくる頃だ。今日は早めに寝ようとグランは席を立つ。
    シエテと二人きりだと変に意識してしまい、あからさまに避けてしまうだろう。安易に彼を傷つけたいわけではないが、グランは彼との適切な距離の置き方が分からないでいた。

    「ただいま~!」

    そうこうしているうちに意中の相手が帰ってきてしまった。
    ここで何も言わずにひっそりと部屋に戻ることもできたが、流石に愛想が悪すぎるな…と思いリビングに入ってくるのをじっと待つ。

    「あ、グランちゃん!ただいま~!ジータちゃんはもう寝ちゃった?」
    「おかえり。うん、もう寝たよ」
    「ふふ…相変わらず早いな~」
    「お湯、まだ温かいから…お風呂入ってきたら?」
    「ほんと?ありがと~。あ!グランちゃんも一緒にお風呂入らない?」
    「は…?」

    思わず低い声が出てしまったことに内心動揺する。
    いけないと思いつつ、何を考えているのかと沸々と怒りもこみあげてくる。

    「いや…僕もう入ったし…何度も言ってるけど、もうそんな年齢じゃないからね?」
    「えーもう入ってたの?早いな~昔は夜までダラダラしてたのに」
    「いつの話してるのさ…」
    「じゃあ一緒に寝ようよ」

    地団太を踏まなかった自分を褒めたいとグランは思った。
    何食わぬ顔でツラツラ言葉を重ねるシエテを憎らしく思う。
    人の気持ちも知らないで…いや知っていて言っているのだろうか?そう思いながら顔を伺えば、いつも通りの見慣れた笑顔。

    「……却下」
    「なんで~ッ!グランちゃん最近冷たい…」
    「そんなことないだろ…僕も子供じゃないんだから一人で寝れるよ。とにかく、もう僕は寝るからね」
    「あ…!待ってグランちゃ…」

    シエテの言葉を遮る様にして自室へとグランは戻る。
    (一緒にお風呂に入ろうだって?それがだめなら一緒に寝よう?何を考えているんだあの人は…!)
    想像しただけで顔が熱い。グランも今年で15歳…思春期真っ只中だ。好きな人に誘われて嬉しくないわけがない。
    だがシエテにその気がないのも理解しているため、空回りで終わることにむなしさを覚える。グランはシエテに振り回されたくないのだ。

    頭から布団にくるまり目を閉じる。先ほどのシエテの言葉が脳内をぐるぐる回り、変に想像してしまい中々眠りにつけない。何か別の事を考えねば…と部活のことを考えながら暗闇に意識を落としていく。


    ふと、背中にぬくもりを覚えて目が覚める。

    ぼやけた眼で自分の腹に目を落とせば、白い腕が巻き付いていた。
    シエテの手だと認識した途端に一気に目が冴えていく。振りほどきたくなったが体が硬直して動かず、耳の奥でバクバクと響く心臓の音を感じながらじっと息をひそめる。

    「グランちゃん…」

    肩にシエテの頭がすりすりと擦り付けられ、グランのお腹に回された腕に少し力がこもる。心臓がドキリと跳ねるのを感じながら寝たふりを続け、静かに様子を伺う。

    「まだ子供でいてね…」

    ずるい人だとグランは思った。シエテの中では当たり前のようにグランは子供で、庇護される対象なのだ。
    ドクドク波打っていた心臓が段々落ち着いてくる。諦めに近いため息が思わず零れた。グランが途中で起きたことを、シエテは分かっているのかもしれない。

    グランは自分のお腹に回された手にそっと触れた。後ろでシエテが息を潜めたのを感じ、そのまま引き剥がそう思っていた手を止める。
    グランがシエテに踏み込むほど、きっとシエテは距離をとる。
    彼と一緒に暮らすようになってからも、グランは残され続けている彼の本当の家の存在がずっと気掛かりだった。

    こうして一緒に暮らしているのなら、元の家はもういらないはずだ。それでもまだ残しているのは、シエテがいつでもこの家を出て行けるということを意味する。
    グランが変に距離感を間違えれば、彼はこの家を出て行くかもしれない。
    だってグラン達は本当の家族でなく、シエテはあくまで仲のいい”近所のお兄さん”なのだ。

    シエテの事が好きだ。離れたくない…離れていってほしくない。
    グランはこれからも彼との距離感に悩むだろうし、彼の想いを拒むことも出来ないのだろう。

    シエテの温かな右手を自分の右手で包み込んで、グランはそっと目を閉じた。

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