例の三年(高+尊)高と尊は元々兄弟みたいに仲が良かったのに組ガシラの件でガッツリ拗れたまま1年半くらい会話出来ない期間がありそうだなと
医者から絶対に外から菌を持ち込んじゃいけない。誰かを入れるなんてもっての外。その人が入るだけで今の組頭は簡単に死ぬ。尊もここで寝泊まりして外に行く時は誰とも会わないように、直接会話をしてはいけない。もし誰かと話すなら障子越しでとキツく言われてた子尊。
雑のことがただただ心配で、せめて姿だけでも見たい。弟分の尊が世話係をしているなら、自分にも何か手伝えるならやらせて欲しい。そんな思いで部屋に向かう高。
そこで菌扱い事件があって絶縁状態に。
尊は何も言わずに部屋入って障子押さえながら菌扱いして絶対に入れず、怒って高がいなくなった後に、雑を心配して来ただけの大好きなお兄ちゃんを菌扱いしたこととか、去り際に怒って大嫌い的なこと言われたりしたのが悲しいのと罪悪感とで泣きたいんだけど、雑の横で騒いじゃいけないって言われてるからうるうるしながらも唇噛み締めて耐える。
高はまさか仲良しだった尊が自分を見た後慌てて部屋に引っ込んで何言っても開けてくれなくて、ちょっとイラッとしてなら力づくでと思ったら「菌を持ち込まないでくださいあっち行ってください小頭が死んじゃいます!」て拒絶されて、小頭が死ぬって言葉と菌扱いに怒って暴言吐いてその場から去るんだけど、独りになってから雑に会わせてもらえなかったことやあんなに仲が良かった尊に話もきいてもらえず菌扱いされたのが悔しくて悲しくて声出さないようにぼろぼろ泣く。
そっから絶縁状態は続くんだけど、数週間前に雑が目を覚ましたって聞いて、障子越しでもいいから声を聞けたらってまた部屋の前まで行く高。
なるべく誰にも見つからないように行くんだけど、部屋の前の庭に隠れてたらちょうど通りかかった山に見つかっちゃう。山は高がどうしてここにいるのかはなんとなく察していて、高の気持ちに寄り添いながらも面会許可が出てからまた来なさいって言う。それに高が素直に頷いた瞬間、部屋の中から何か重いものが壁にぶつかる音と「ギャンッ!」と動物の悲鳴みたいなのが。まさか部屋の中に曲者が?!て焦るんだけど、遅れて嗄れた怒鳴り声が聞こえてきた。
一体何が…と思ってると山が険しい顔で「尊、尊大丈夫かっ?動けるか?」と中に呼びかけて、それ聞いて高は初めてさっきの悲鳴が尊の声だったと気づく。
「や、山本様っ、大丈夫です、大丈夫ですから!」と中からずりずりと足を引きずる様な音をさせなが近づく声は確かにあの弟分のもので、つまり先ほど壁にぶつかったのもそうで、ならさっきの怒鳴り声は…そこまで考えたところで山が今度は少し声を抑えながら中に声をかける。
「入らないから安心しなさい。医者を呼ぶか?」
「いえ大丈夫です。お薬を塗る時によくあることなので、お医者様もこういった反応が返ってくる分には問題ないと仰っていましたから」
「そうじゃなく…いや、いい。何かあればすぐ外に出るんだぞ」
「はい!雑渡様に何かあればすぐにお医者様をお呼びします」
そう返事すると尊はずるずると音をさせながらまた部屋の奥に戻った。山は激務で疲れた顔をさらに悪くしながら一度強く目を瞑ると、高の腕を掴んで二人でその場を離れる。高は頭が追いつかずされるがまま山に着いていくしかない。
部屋から離れた誰もいない場所まで来ると、山は高と向き合いしっかりと目を合わせる。
「今見たもの、聞いたものは全て忘れなさい…と言っても、無理な話だろうな」
「…あの、雑渡様は」
「小頭は今火傷の影響で朦朧とされていて、部屋にいる者の判別もできる状態ではない。死んでもおかしくない怪我だったのだから当然だ。今はただ痛みと苦しみに耐えながらひたすら治療を受けておられる」
「あいつ…壁にぶつかったようでした」
「よくあるらしい。元の身体がしっかりしていたからか、治療の苦しみから反射で医者や世話係に手や足が出てしまうようだ」
「ッ!…雑渡様、尊のことがわからないんですか?」
火傷を負う前の雑は高と尊をとても可愛がってて、特に幼い尊のことは見つけるといつも構い倒していて、そんな雑があの部屋で別人のように尊を壁に投げつけ、怒鳴り声を上げていたことに強いショックを受ける高。
「先ほど言った通り、今の小頭は正常な判断ができる状態じゃないんだ。あの子のことも認識できていないだろう。出来ていればあんなことするはずがない、そうだろう?」
「……はい」
「何も出来ない辛さは私も痛いほどわかるが、今私達に出来るのは待つことだけだ」
耐えきれなくなったら独りにならずに私のところに来なさい。そう言って山は高を部屋まで送ってくれる。
高はその日一睡も出来なかったし三日間高熱に魘されたけど、治ってからは雑がわざわざ狼隊に入れるようにしてくれたのにこれじゃいけない!て忍者修行や忍務にめちゃくちゃ励むようになるし、落ち込んだ時は山のところに行って話を聞いてもらったりそばに居させてもらったりして、心折れずに頑張って過ごした。でも前より寝つきは悪くなった。
火傷から一年半後に面会が出来るようになって、山が高を連れて雑のところに。そこには見た目こそ包帯だらけで変わってしまったが、高のよく知る大好きな雑の姿があって、そこで我慢できなくなって号泣。大人達に「心配かけたね」「よく耐えたな」て言ってもらってさらに泣く。
泣いてるところに洗濯が終わった包帯持って尊が現れるんだけど、その姿見て高絶句。記憶より細くなった手足。あの気持ちよかったぷにぷにのほっぺたがなくなった顔。尊は看護中の色々なストレスで最低限しか食べれなくなってたからめっちゃ細くなっちゃってる。
びっくりしてガン見してたら高が睨んでると思った尊は咄嗟に逃げようとしちゃうんだけど、その腕掴んで引き寄せて「なんでこんなに細くなってるんだ!」て叫ぶ。
高が「なんでこんなっ、触り心地のいいぷにぷにはどうした!?」て泣きながら叫ぶのを見て、尊はやっと高と顔合わせて会話ができるのと、もう仲良くしてもらえないかもって不安を思い出して「じんにいさまぁぁぁぁ!!」て号泣。それにつられるように高も号泣。雑の部屋は子供二人の泣き声でいっぱいに。
大人達は今日まで頑張った二人がやっと大声で泣けるようになったことに胸を撫で下ろし、敢えて口は挟まずに二人が落ち着くまで待つ。でもなんか色々ありすぎてせいか泣き止むタイミング逃して二人とも過呼吸になりかけて慌てて医者を呼ぶっていう。
落ち着くまで寝てなさいって別室に布団並べて寝かされる。そこでようやく泣いてない状態でお互いの真っ赤な目を見て笑い合えた。尊が高の布団に潜り込んでぎゅって抱きつくと、高も抱きしめ返しながらそのまま一緒に寝る。安心してぐっすり寝る。
その姿をしっかり確認した押が、雑と山に報告して三人でよかったぁぁぁ!てなってハッピーエンド!!!!
尊と高の絶縁状態になったきっかけは、実は隠れて雑の部屋の警護をしていた黒鷲隊からの報告で山と押は知ってたし、雑と面会が出来るようになってからはすぐに知らされてたので大人三人はしっかり事情を知っていたっていうことでどうかよろしくお願いします。