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    おリス

    @oh_risuchan

    球体のらくがきとか書きかけの文章とか。🔞のものなどはこちらに置きます。
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    おリス

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    ⚠流血表現・戦闘描写
    フレギャラ小説と言い切りたいけど原作程度の絡みしかない。(面識すら持てず)
    長年の生命の叫びって何なの…ギャラさん…救われて…😭の思いを込めに込めた怪文書です。しぶにも投稿済。
    メタさんの戦いぶりがこうだったらいいのにな♪も詰め詰め。主人公側はIfパラレルの戦闘でもギャラさんにとっては全部現実という設定です。

    #フレギャラ
    #ギャラクティックナイト
    Galacta Knight
    #バルフレイナイト
    Morpho Knight
    #メタナイト
    Meta Knight

    Fly me to the Other Side ――、

     我は。
     我は、何。
     かつて何と呼ばれし者か。


     視界が明らかになっていく。目蓋が開き、そこから光が差し込んできたのだ、と少し遅れて認識する。重い、まるで鉛のような膜が全身にまとわりついている。しかしそれらはごく僅かずつながら、重力を失っていくように思えた。
     ――また、目覚めるか。
     そう意識した途端、柔らかに肌をしていた淡紅色の膜が氷結したように硬度を持った。
     すべての神経が正しく機能し始める。奪われていた力が急激に体内に戻る感覚。翼を広げ、四肢を震わせる。身を封じていた物質が破片を撒き散らして容易に砕け散った。
     拍動に合わせ胸に満ちる、激情。己の細胞のひとつひとつに至るまでがこの場のすべての破壊を望んでいる!
     それは憎悪ではない。憤怒と言えたものかは不明だ。感情というものが、いま明確には思い出せない。血潮とともに指の先まで流れ巡るこれは、衝動だ。そして目に映るすべてを無に帰すまで破壊し尽くさねばならぬという、ただひとつ限りの意志。
     翼が風を受ける。旋回し、地に降り立てば硬い感触が確かに脚甲を伝う。両腕の拡張とも言うべき愛槍と盾とが、たった今から存分に振るわれる予感にきらめきを放つ。
     ふと、黄金の光が目を灼いた。
     行く手に何者かが佇んでいる。己と似た姿の――銀河の果ての色をした者。その者が携えたうつくしい光は、複雑に枝分かれした宝剣であった。
     そうしてつるぎと同じ色をした双眸が覗く仮面の奥から、ギャラクティックナイト、と低く呟く声が聞こえた。


        🪐🪐🪐


     銀河最強の戦士。
     強さ故に封印された伝説の騎士。
     多くの者が彼を知っている。ただし、ありふれた御伽噺の題材にすぎぬものとして。稀覯本に類する古代の文献をあたれば実在を匂わせる記述もないではないが――とはいえメタナイト自身、その存在を完全に信じてはいなかった。しかしいま目の前に現れたのは、まごうかたなき伝承どおりの、銀河最強の戦士そのもの。
    「ギャラクティックナイト……!」
     思わずその名が口をついて出る。背に白く輝く翼、白銀一揃いの装備、金の双角を備えた仮面に鮮やかな花を思わせる体色、豪奢なその槍と盾。
     驚嘆に足を止めたのは一瞬、メタナイトは素早く剣を構え直し、敬意をこめて古の戦士に戦闘開始の意を示す。理由は何であれ、彼と剣を交えられるなど僥倖だ。そう思い至ると同時に灼け付くような高揚が全身に行きわたる。
     白き騎士がこちらを見据え、優美に槍を振る。たったそれだけの動作で超音速の波が発生した。躱しながら間合いを詰めるが彼はもう高く飛んでいる。寸分違わず真上から突き下ろされた槍を辛うじて剣で受ける。激しい金属音。防御は成功した、しかし肌に細やかな裂傷ができる。
     間を置かず繰り出される突き、払い、その多彩な技を受け切りながら反撃の機を窺う。まるで針の穴ほどの隙だ。その恐るべき速さで振り抜かれる槍、反動すら用いて次の一手へ繋がる動作の、流体のようなとめどない運び。完成されあやまつことのない美麗なる舞いを見ているかのようだ。
     防戦に努め、掠り傷が増えていくのに比例して、メタナイトの胸は更なる熱を帯びる。憧憬を以て望み続けた戦闘! 風圧を受け土埃に塗れるたび、いまその場に臨んでいるのだという喜びに満たされる。彼の挙動のすべてを余すところなく味わうべく地を踏み締めた足先にもいっそう力が籠もる。
     互いの得物が文字通り火花を散らす。戦況は拮抗している。厄介なのは槍ばかりではない。盾だ。攻めの素早さで劣らぬ自負はあったが、斬撃のほとんどはその滑らかな表面に逸らされていた。彼は自身の身の丈ほどもある武具を両腕に備えながら、それらを羽毛のように軽々と扱う。これほどの重装で飛翔、滑空し、こちらと同等の速さを保つ様はまさに超常の戦士と言ったところだ。しかし跳躍の瞬間だけは、盾に払われることなく剣が通る。敢えてふところ深くに突き込み、更に追撃を試みれば、こちらも浅くはない傷を受けつつも切っ先を届かせることができた。
     一際深い手応えを得たとき、白き騎士は後退し、翼をはためかせて空高く飛んだ。突然取られた距離の長さにメタナイトは警戒を強める。
     何か、来る。それも危険極まりないものが。
     ギャラクティックナイトが羽ばたきとともに槍身を振り、空へ掲げる。舞い散る羽の中で、その穂先に陽光を束ねたかのごとき眩い光の柱が現れる。光は大気中の水分すら蒸発させるような禍々しい音を立て、ぐるりと周囲を灼き尽くしていく。戦艦主砲にも似た凄まじい破壊力。食らえば即時に戦闘不能となる、そう判断しメタナイトが上空へと退避した直後、大地一面、巨大な爆発音を立てて烈火に包まれた。
     まるで――いや、まさしく、彼こそ決戦兵器そのものだ。眼下の光景にメタナイトは息を飲む。炎が風に流れ残った熱気に陽炎ばかりが揺らめく中心に、真白き翼の騎士がひとり降り立つ風景はひどく絵画的で、黄泉の風景とはこのようなものか――そんな感慨をメタナイトに抱かせた。

     もうどれほどこうして戦っているのか。あまりに長く互角に打ち合い、時間の感覚を無くして久しい。
     ごぼ、と気泡混じりの赤黒い体液が口腔から溢れ出る。飲み下せず鈍色にびいろの仮面の外側まで派手に汚したそれは、生ぬるく潮の香りがした。拭う間も惜しみ、背から脇腹を貫いた光の剣を引き抜く。柄を握った左手にグローブ越しにも衝撃が走る。電撃が弾けるような音と光を発し光刃は消滅した。高濃度エネルギーの塊か、と瞬時に推測する。無理な抜去により体内と掌が激しく灼かれたのがわかったが、止血できたのならばむしろ都合がいい、と薄く笑んでメタナイトは半歩飛びすさる。
     中空に浮遊し槍で天を衝く白銀の騎士、その号令めいた華々しい仕種に応じて迅雷が降る。いや、大地から励起されるのか。その狭間を見抜き、身を滑り込ませて猛攻に耐える。構えを解いて降り立とうとする足先に下から斬りつけたが、赤い瞳は怯む色すら浮かべない。装甲の間隙かんげきを捉えたこちらの切っ先が肌を裂くのを当然のように受け、なおも槍を突き立てんと大きく翼をはためかせる。ここぞ、とメタナイトは己が宝剣を仮面の前に据えた。精確に落下してくる騎士渾身の一撃、その精確さこそを利用する最大の反撃。
     大気震わす炸裂音。
     名の通りの――ギャラクティックカウンターが発動した。


       🌙🌙🌙


     熾烈な戦闘から離脱し、残る力を振り絞って愛槍で次元を裂き、飛び込んだ先は暗く静かな無人の星だった。冷たい砂礫の上に身を横たえ、ギャラクティックナイトは裂傷から自身の体液が溢れていくのを見るともなしに見ていた。
     全身を濡らす赤。力の源がそこに在るのだ、とギャラクティックナイトは本能的に理解している。このまま流れ出すに任せればすべて失われ、二度と戻ることはないと。
     それもよい、と目蓋を閉じたが、並外れた己の生命力は死の安寧を許さなかった。もはや戦闘の高揚も破壊衝動も傷の痛みを麻痺させてはくれない。身体的な、あまりに直接的な苦痛が激しく精神を苛む。裏を返せば、それらのシグナルはみな、ギャラクティックナイトに“生きよ”と命じている。
     巫山戯ふざけるな、これ以上、何故生きねばならない? そのような精神の反論はいずこにも届かない。誰も聴くもののない叫びはただ果てなき虚空の中に拡散し、あとは孤独に、肉体が時間を掛けて再生していく軋みに喘ぐだけだ。血の管、肉の繊維が絡まり合い繋がるたびにギャラクティックナイトは声にならぬ咆哮を上げた。


     ――
     ――誰だ?

     ――、

     何者かの呼声に、悠久に思えた微睡みから目覚める。辺りを見回す。確かに声を聞いた気がしたが、生物の気配は一切なかった。
     ここがどこであるのか、何故己はこんな場所に横たわっていたのか、何一つ思い出すことができない。いや、それよりももっと根本的な――そもそも己は何者なのか、何を思い、どのように生きていたのか――思考に分厚いかすみがかかり、それらの答えにはどうしても辿り着けなかった。すべては遠い昔に鍵を失くした小箱に収められているような、そうして長らくそのままで過ごしてきたような、そんな気さえしていた。ならばきっと、己にとってそれらは些事で、不要な事柄であったのだろう。
     ギャラクティックナイトは立ち上がり、背に生えた一対の羽根を広げる。体色と同じ色の槍と装飾入りの盾を手にすれば、曖昧に溶けかけた己の輪郭が戻る感覚があった。この一揃いの装備こそ、唯一己を己たらしめるもの。ギャラクティックナイトはそのように確信する。
     そう――そうだ。破壊を。
     すべてを破壊し尽くさなくては。
     激情が胸に戻る。
     飛翔する。先程まで身を預けていた大地に槍を向ける。喉が裂けるほど声を上げ、岩肌に向けて全身全霊で加速する。羽根が背後に散るほど速く、まさに彗星のごとく。
     衝突。轟音を立てて冷え切った星の骸が砕ける。礫が降り注ぐ中をギャラクティックナイトは真っ直ぐに進む。爽快さも喜びもない。ただ、そうせねばならぬという思いだけがギャラクティックナイトを突き動かしていた。


       🌠🌠🌠


     幾つもの星を破壊した。
     己の目覚めた場所はあまりにも辺境だったのか、どれもこれも無人の星ばかりだった。だが別段、どちらでもよかった。目につくものを粉微塵にして進むほかにギャラクティックナイトの為すべきことはない。むしろ住民の抵抗がなければやりやすい。それだけのことだ。
     羽ばたきに任せ宇宙空間を往く。不意に、まったく突然に前方の空間が黒く歪んだ。警戒するも一瞬遅く、体が黒いもやに呑まれる。異空間ロード! 自身の力のみで意図的に次元を斬り裂くことのできるギャラクティックナイトにはその靄の正体がすぐに判った。この先はまったく別の、時間軸すら異なる空間に繋がっている。
     だが、もはやどこであろうと――為すことは同じだ。

     熱を含んだ風が仮面の隙間から入り込み、頬を撫でる。
     戦闘直後のような匂いが辺り一帯に漂っている。故知らず、郷愁のような感慨がギャラクティックナイトの胸に浮かんだ。
     眼下に祭壇めいたものがある。禍々しい儀式の名残が気配としてそこに満ちている。ああ、これこそく破壊せねばならぬものだ、と理由に見当さえつかぬまま神経が波立つのを感じた。
     己を包んでいた靄から祭壇まで、一気に落下の勢いを早める。着地、と同時に周囲に生物を認識する。まとめて始末する。そう念じ、槍を構え直したとき、何かが天から降り来たるのを見た。
     静かに発光し、黄金色こがねいろの軌跡を残してゆらゆらと落ちる花弁のようなそれから、何故か目を離すことが出来ない。
     やがてそれは眼前に迫り、そうして愛槍の穂先に触れた。
     ――蝶?
     有り触れた羽虫。だが何故いまこのような場所へ、と思う間もなくぞくりと肌が粟立つ。本能が全身に向けて発する最大の警告――久しく覚えたことのなかった恐怖が、生命の危機を告げている。
     一体何に恐怖している、まさか蝶、に?


     ――

     ――、
     我は。

     ああ、我はかつて、英雄と呼ばれていた。
     祖国。その民。愛すべきもの。守るべきものがあった。
     脅威はすべて打ち払った。ことごとく塵にしてみせた。
     その果てに、我が身そのものが災厄と呼ばれた。
     それから滅ぼされ、死ねず、次元の狭間で眠り、喚ばれ、戦い、囚われて――死ぬことだけは決して叶わずに。また目覚めては破壊を為すだけの、無意味な繰り返しを魂の擦り切れるほど幾度も幾度も幾度も幾度も。
     我は、破壊衝動そのもの。
     否、それしか有することを許されぬものに、堕した。

     暗転した世界に記憶の欠片が浮かび上がりひとつの絵画のように繋ぎ合わされていく。なんと輝かしく愚かしく、哀しい夢か。他人事のように顧みれば、ついぞ得られなかった終焉への憧れが瞳からこぼれだすのを感じた。
     その雫の熱が体を伝い落ちたとき、憧憬はほとんど叫びになった。
     忘却は精神を防衛するための、か細き最後の綱だった。
     それが今――完全に、断たれていた。


     光、が。
     再び視界が明らかになる。
     ギャラクティックナイトは――かつてそのように呼ばれた者は、まばゆい光を感じながら、項垂れた頭をゆっくりと上げた。
     右の手には見覚えのない剣が握られている。しかし確かに己の得物だと思った。
     左の手には何もない。何か重大なものが欠落しているような気がしたが、それもほんの一瞬のことで、物心のついた頃からそうであったかのように身軽さはすぐ体に馴染んだ。
     両手両足を包む一揃いの具足は金色の光を湛えている。あたたかに、精神を慰撫するかのように。
     羽ばたいてみれば背中の羽は思うとおりに、いやそれ以上に素早く応えた。
     総身に行き渡るやわらかな心地良さに紅き騎士は目を細める。
     まるで夢物語の最果ての国に導かれたような心持ちだ。
     あらゆる苦痛から解き放たれるというその国を、人々は何と呼んだのだったか。

     ――おまえの生命の叫び、確かに聞き届けた。

     そうしてひどく穏やかな、誰かの声を聴いた。



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