それでも何とか顔を上げたら、雲さんがこっちを伺うように見てた
本当は今すぐ飛び込みたいはずなのに、心配そうに俺の様子を伺ってくれて
情けなくて泣きそうになったけど、堪えて大丈夫、の意味でうなずいて見せたら
雲さんもうなずき返してくれた
襖の座に手をかけて、雲さんがみっちゃん、からちゃん、俺の順番でもう一度目を合わせてくる
俺たちがそれにうなずいたのを見て、雲さんは勢いよく襖を開け放った
:名無しの審神者
緊張してきた
:名無しの審神者
中で一体何が……
:しゅう君審神者
襖を開けた雲さんは、予想に反して飛び込んでは行かなかった
変わりに目を見開いて、信じられないような物をみた表情で立ち尽くしてた
それは雲さんのすぐ後ろで構えてたみっちゃんも同じだった
からちゃんと目を合わせて、攻撃される心配は無いのかな、って思った時、
みっちゃんの「雲くん!!」って声と同時にドサドサ、って物凄い音がした
あ、喋っちゃったまずいって思って慌てて2人を見るけど
そこには米俵3つと、落とした拍子にエコバックから飛び出したんだろうな
カントリーマアムの袋があるだけで
俺は2人が中に入ったことを悟った
でも何の音もしなくて
もし俺の本丸で誰かが怪我をしているなら手当しなきゃだし、
俺の本丸じゃ無かったとしても誰かが怪我をしているなら当然放ってはおけない
渋るからちゃんに頼んで俺も中を見る事にした
からちゃんの肩越しに覗きこんだ部屋は、想像通り
どこもかしこも朱殷に染まっていた
みっちゃんは入り口近くで蹲ってて、雲さんは奥の方にいた
みっちゃんに駆け寄ろうとしたらからちゃんに押し留められて、お前は向こう、って目で言われたから、その場はからちゃんに任せて俺は雲さんのほうへ向かった
赤黒くなった畳の上に雲さんは、呆然と何かを見つめていた
雲さんの見つめる先にあったのは、
ボロボロに折れた刀の残骸だった
:名無しの審神者
:名無しの審神者
:名無しの審神者
え
:名無しの審神者
ヒュッ
:しゅう君審神者
頭が真っ白になった
何も考えられなくて、雲さんがぺたん、って畳に座り込んで
折れた刀に手を伸ばすのをただただ黙って見ているしかできなかった
「……あめ、さん?」
少しして、一欠片の刀身を手に取った雲さんが呟いたのが聞こえて
脳がその言葉の意味を理解するより先に、雲さんが咳を切ったように叫びだした
「あ、あめさん……なの……?うそ、なんで、ちょっと前までふ、普通だったじゃん、俺のこと見送ってくれて、み、みんなで待ってるって言ってくれたのに、なんで、みんな、ああ、うそ、うそ、あ、ああ、あああああああああああああ!!!」
何か硬いもので思いっきり頭を殴られたみたいな衝撃だった
雲さんが拾い上げた、ボロボロで、あちこちに刃こぼれが見受けられる刀の欠片が雨さんだという事も、更にその周りに散らばっているのが江の刀だという事も、嫌でも理解してしまった
でも、この状況が何なのかは理解できなかった
したくなかった、のかもしれない
雲さんの言う通り、俺たちはちょっと前に江のものたちと鶴さん、貞ちゃんに見送られながら本丸を出て万屋に向かった
買い物を終えて、さあ帰ろうと思ったら妙な気配のする廃墟に着いちゃって
本丸中敵襲に合ったみたいにボロボロで、なのにここは俺たちの本丸かもしれなくて、
く、雲さんが抱えてる雨さんも、俺の五月雨江かもしれなくて
そ、それで
:ω審神者
おちつけ
思い出すだけでしんどいなら無理して書き込まなくてもいいんだぞ
どの道救助後に事情聴取を受けなきゃならんから
そこで嫌というほど克明に事情を聞かれるしな
:名無しの審神者
事情は気になるが1の具合最優先で
:名無しの審神者
うむ
:しゅう君審神者
ありがと
でも整理もしたいし、文字にして気づく事もあると思うからぼちぼち書いてくよ
ちなみに今は俺と雲さんは玄関で待機、みっちゃんとからちゃんには2人で本丸やばい雰囲気がするところ以外を見て回ってもらってる
正直俺も二手に分かれるのは、って思ったけど色々あってこうなった
それも含めて書いてく
「主、雲くん」
泣きじゃくりながら散らばっていた江のもの達の破片を拾い集める雲さんを
見ている事しかできなかった俺に、声がかけられた
振り向くと、まだ若干顔色の悪いみっちゃんが、からちゃんに支えられながら立っていた
大丈夫なの、って聞く前に、みっちゃんが言った
「よく聞いて。ここは、僕達の本丸じゃない」
「…………主」
その直後、雲さんが小さな声で俺を呼んだ
雲さんの手には近侍用の端末が握られていて、
画面には、五月雨江の文字が浮かんでいた
雲さんは拾い集めた刀の欠片を上着にくるんでいたから
その上着のポケットに入れていた端末の振動にもすぐに気づいたんだと思う
俺が出てみて、って言うが早いか雲さんは通話ボタンを押した
その瞬間、ざわざわとした喧騒が端末越しに静まり返っていた部屋に流れ出した
当然、スピーカーになっていることには気づいたけど、止める気は起きなかった
『……雲さんですか?すみません、急に連絡してしまって』
ざわめきが溢れる端末から、静かな声が流れ出した
雨さんの声だった
「………………あ、め、さん?」
泣きじゃくったせいで少し枯れてしまった声で雲さんが返事をする
チャリ、と、腕に抱きかかえたジャケットの中で、欠片たちが身を寄せ合う音が聞こえた
『はい、あなたの雨ですよ。思ったより時間がかかっているようで、気になっていたら連絡をしてみるよう豊前に言われまして』
『だってよお、不安になるより直接連絡したほうが早いし安心だろ?』
『流石豊前だね』
:名無しの審神者
:名無しの審神者
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