カイが喧嘩神輿を舞手に話し出した時から、嫌な予感はしていた。
やっぱり俺を引き摺り出そうとするのはお前なんだな――と、クラマは思った。
けれど、今更里民に合わせる顔がない。そう思って逃げた自分を、悔やむ暇もなく顕現させられ、これからのことに少しだけ怯えていた。
「まあまあ、そう言うなって。お前も久々にシャバの空気が吸えてよかっただろ?」
まるで変わらない。
50年の時を経ても、変わらないその男の一言に、気持ちが落ち着いていくのがわかる。
クラマは御扇を構え、大きな風を起こしてカイを山の方へ吹き飛ばした。
――俺らはこうだったよな。
「まったく酷い目にあったぜ…やっぱり絆されて妙なことするもんじゃねえなあ」
そう言ったカイの顔は少し嬉しそうだった。
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