薄紅薄紅
お前さんは紅を購ったことはあるかい、と、唐突に一文字則宗――則宗さんに言われた。正直なところ、憧れない訳ではない。だが、その質問には首を横に振った。
別に、着飾る必要がないからだ。審神者として働いているうちに、そう思った。みな、良くしてくれる。たとえ私が紅をさしていなくても、何でもないように接してくれる。ただそれだけで良いと思ったのだ。
ふうん、と、質問をした張本人は何でもないことのように、去っていく。ただの世間話だったのだろう。と思っていたのがつい数週間前。
唐突に、紅を贈られた。
誰に? 勿論、則宗さんにだ。それも、手渡しではなく、気がついたら菊の花と共にぽんと添えてあったのだ、執務室に。今現在、執務室に入れるものは少ない。そのうえで菊の花といえば、あの金の髪をした男、ただひとりしかいなかった。
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