過去ログ9湯気の立つ内臓が凍った地面に打ち捨てられた。汚物のような黒い内臓が真っ白な雪を溶かしていく。まるで浄化だと、一人の男がせせら笑った。
一人の男が立つのはヤーナムの街の片隅だ。
獣が駆けずり回った石が張られた地面の至る場所が砕け、疎らな大きさの破片が歩くたびに蹴り上げられた。
不意に白い息を吐き零した男が何かを呟く。歌うように響いた声は低く、くぐもった笑いを含みながら。
「手こずらせやがって」
喉を鳴らした嘲笑が黒く澱んだ夜の闇の中に吸い込まれ、呑まれ、やがて静まり返った。訪れた静寂は冷たく、狂気を孕んでいる。
腐った汚泥のような血の臭い。生臭い獣の毛皮。ガスが噴き出す腐敗した内臓。
顔を顰めたくなる獣の死体を前に、男は静かな笑みを浮かべていた。
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