愛を込めて××を12月x日。
今宵はホリデーだ。
暗い窓から外を見やると表の世界の人間たちは眩しい灯りが取り囲む中、皆思い思いに大切な人との時間を過ごしていた。
彼らはこの暖かな時間を惨たらしく破壊しようとする勢力を我々がたった今潰してきたばかりなどとうてい知る術も無いだろう。
「今お戻りかい?」
今宵は人払いをしているはずのプライベートな拠点の入口。その背後すぐ背後からぬらりとした声が降ってくる。
すっかり馴染んだその気配と分かっていてもなお、私は流れるような手さばきで仕込み杖を引き抜き、その声の主の喉元へ鋭く磨がれた銀色を突きつけた。
「おや、おかえりなさい、モクマさん。」
「ただいま~チェズレイ。」
声の主は顔を緩めてふにゃりと笑みを浮かべた。
「今回の作戦は先に貴方が拠点に戻っている手筈です。何かトラブルでも起きましたか?」
静かに鋼を元の杖の中に仕舞いながら問う。
「いんや、帰り道ふと大通りを見たら人も街も皆キラキラ光っていて。あぁそういえば今はホリデーだったなぁと思ったんだ。」
「ええ、そしてその光に紛れて人々を脅かさんとする勢力を私たちは先程潰してきたばかり。」
「うんうん。それもこれもお前さんの事前の入念な策のおかげだ。しかも今回は予定時刻より早くに方が付いたでしょ?だからちょいと寄り道をね…ほらっ!」
モクマさんに抱えられた首巻を解くと目の前にこぼれんばかりの花が咲いた。
「おや…これはこれは。ガーベラに薔薇に、アイリス、そしてクリスマスローズに…ずいぶんと個性と色がひしめき合った花束だ。」
「潜入後の帰り道、お花のワゴンを丁度見かけてね。店主に話しかけてみるともう今日はお店閉めちゃうって聞いたから『じゃあ、ここのお花全部ください!』ってやっちゃった。だから色んな花がちょっとずつ入っているよ。」
「えぇ、そのようですね、整然からは程遠い貴方らしい花束だ。それにしてもモクマさん、このお花をマフラーでお運びに…?」
「そっ!早く見せたくって急いで帰りたかったからね。おじさん流ショートカットにもバッチリ耐えられると思って。」
その言葉と共にはらり、と赤い花弁が私の足元へ落ちた。思わず0点…と告げたいところだが、目の前の花束もモクマさんも街と同じ顔をしてきらきらと温かい光を放っていた。
別々の道を生きてきた人間が集まって信じられないくらいの大きな事を成し遂げる。色も形もバラバラの個性を束ねた花束はかつて相棒の故郷の地で繰り広げたあの日々を思い起こさせた。
そこに私の描くような美学は無くとも、絆はあった、間違いなく。
「さ、早く入りますよモクマさん。その花束を早く花瓶に活けてやらねばなりません。それに今夜はターキーを食べるのでしょう?」
「あぁ、前の日から下拵えしてたからね、後は焼くだけだよ、スープもばっちり!ワインもあるけどお前さんも飲むかい?」
「折角なので頂きましょう。」
2人手を繋いでくすくすと笑いながら扉の鍵を開ける。闇をたたえて待っていた部屋に暖かな光が灯った。