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    泥カバー🫠

    @suikaba_magoI

    水カバーです。
    なんかrkgkとか変なのとか描いた時ぽいぽいしますッ(っᐛ )╮

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    泥カバー🫠

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    うぃー本編中に二人でお泊り会します。己の欲望に忠実に書きました。多分これはカビマホ…なのかな?
    かなり癖と願望と勝手な自己解釈ぐちゃぐちゃのヤミナベですー

    ポップスターに墜落してから、どのくらいの月日が経ったのだろうか。
    いくつもの夜を越え、朝日を浴び、夕日に照らされて、この大地の自然に触れ、まともに季節を感じて。ここで過ごした時間も長くなってきた。
    錆びついていた日々が、鮮やかな色を覚えた。この星を、確かに"好きだ"と思ってしまった。
    今までに感じたことも無いような感情を、この胸の奥で絶え間なく動き続けている心臓の気持ち悪さを、嫌と言う程感じてしまう。

    怖い

    自分でも訳が分からない。ただひたすらに、恐怖を感じる。

    いつの日からか、堪らなく夜が怖くなった。暖かくて柔らかい、一番星の光を強く浴びすぎて、それが一秒でも無くなるのが耐えられなかった。
    前までは、望んでずっと一人を選んでいたじゃないか。全然平気だったじゃないか。それなのに今は、真っ暗闇の中の孤独感を、強く強く強烈に感じてしまう。
    眩しすぎたんだ。あまりにも。どんどんと絆されている自分にも恐怖を抱く。

    毎日毎日、着々とパーツが集まっていく。一歩ずつ"オワリ"が近づいてくる。
    明日なんて、一生来なければいいのに。それなのにまたやっぱり、一人では抜け出せなかった夜明けまでの道筋を導いてくれる、小さな朝日の光を望んでいる自分もいる。

    眠れない夜が続く。

    ☆--------------------☆

    「ねえマホロア、最近寝れてないでしょ。」
    「…………エ、アレ…そう見エル…?…チャント寝てるんダケドナァ…」

    ドキッとした。図星だった。心臓が大きくドクンッと脈打つのを感じる。
    大した誤魔化しが思い付かない。ダメだ。コレは相当きてる。
    いつもの癖で、片手が頭に吸い寄せられて引っ掻いてしまう。愛想笑いを浮かべる

    「……ほんとに?なんか変だよ?」
    「ホントホント!ホラ!この通り、全ッ然元気ダヨ?…そんな事よりもそろそろパーツ集めに行って来て欲しいンダケド…」

    早くどっか行ってくれないかなぁ。このオヒトヨシと一緒に居ると、いつも調子が狂う。妙に勘付きやすい所とか、ホンット〜にイヤ。
    それなのに未だボクに騙されたままでいるのは、よっぽどボクの演技が上手って事なのだろうか。まあその方が助かるから何でも良いんだけど。

    「う〜ん…」
    おもむろに頭を抱えて悩みだす。
    「…そうだ、マホロア。お願いがあるんだけどさ。」
    「…ナニ…」
    ヤな予感しかしない。

    「今夜、ここ泊まってってもいい?」

    ☆--------------------☆

    「お泊り会!お泊り会!ローアでお泊り会!」

    オレンジに照らされた桃色が、スキップなんてしながらこちらにやってくる。手にはお泊り会の道具……らしいものは全くなくて、今日の冒険で得たスフィアやらなんやらばっかりを抱えていた。

    「オカエリ…ハァ…」
    来てしまった…あの後結局、否応なしに半ば無理矢理約束付けられて、今夜はお泊り会…という事になってしまったのだ。

    「ただいま!ちゃんと今日もスフィア取ってきたよ!」
    「アァ…ウン…アリガト…そこら辺置いといテ…」
    「はーい!」
    にへらと笑うキミ。ちょっとだけドキリとしてしまい、思わず目を逸らす。

    「…手ぶら、ナンダネ…ボクも特別ろくに二人で遊べるモン持ち合わせてないンダケド…」

    確かに高鳴る胸の鼓動には気づかないフリして、呆れてるような素振りをみせる。いや、本当はもっと喜んだり何だりして好感度でもあげとくべきなんだろうけど、最早そんな元気はとうに無かった。

    「ん〜、別に良いかなぁって思って。なんにもなくても。」

    ローアには沢山マホロアの作ったゲームもあるし、と付け足して答える。自分で言うのも変だけど、よく飽きないなあといつも思う。最近はしょっちゅうスコア更新を目指して遊びに来るし、よく下のフロアからあの4人の騒ぎ立てる声が聞こえる。相当気に入ってくれてるみたいで、正直嬉しくない訳がない。

    「それよりもさ、晩御飯にしない!?ぼくもうお腹ぺこぺこなの!」
    ぐぅ〜〜っと今にも鳴りそうなお腹を擦りながら目で訴えてくる。何かこの場に食べるものは無いのかと。

    「…ソウダ!折角だしキミに良いものをアゲヨウ!」
    ちょっとした悪戯を思いついた。ニヤッとしてしまう

    「ほんとう!?欲しい欲しい食べたい!!!!」
    目を爛々と輝かせて子供みたいにはしゃぐ姿に、増々楽しみが倍増する。どんな反応してくれるかな。

    「ジャ~ン。コレ、ボクの故郷の食べ物。ト〜ッテモ美味しいヨォ?」

    そう言って箱から大量にある内の一個を取り出して見せびらかしたのは、ただの保存食の栄養ゼリー。

    「おお〜〜!見たこと無いやつだ!どんな味するのかなあ〜〜?いただきまーす!」

    そしてパクっと一口で食べてしまった。袋ごと。流石に予想外すぎる。なんだこのトンデモ生物は。
    冗談抜きで何でも食べるとは前から噂で聞いてはいたものの、目の前の衝撃的な光景に目を丸くしてしまう。

    「…?これ何味?よくわかんないかも…」

    きょとんと首を傾げる。そりゃそうだ、だってそういう悪戯だもの。美味しいと聞いた物は、実は無味だった…ていう、ホントにちょっとしたやつ。

    「…チャント味わって食ベタァ?」

    だけど袋ごといかれるもんだから、ボク的にはもうそれどころじゃなくなっていた。

    「食べたよ!ただいっぱい食べてるだけのデデデと違って、ちゃんと全部味わってるもん!!」
    「フ〜ン、ソウ」
    「あ、それ絶対信じてないやつ!ほんとだよ!?」

    ぽかぽか背中を叩かれつつも、軽く受け流して含み笑いを浮かべる。良いこと聞いちゃった。後でデデデ大王にチクろう。
    今の悪戯は不発だったけど、これは間違いなく良い反応が得られるだろう。密かに新たな楽しみを抱いていると、ふいにこんな事を聞かれた。

    「…これ、いつも夜に食べてるの?」
    「エ、ウン。夜っていうか三食ほぼゼンブだけど…」
    「えぇ…?…マホロアはこういうの好きなの?味が薄いのっていうか…無いっていうか…」
    「好き……ていうか、そもそも味に拘り無いシ、利便性が良いカラ…」
    そこまで言いかけた時、食い気味に割り込まれた

    「ええ!?!?嘘でしょ!?勿体無いよ!?」
    まるで憐れむべき物でも見ているような、あり得ないとでも言うような…とにかく物凄い剣幕で、壁に押し付けながらボクの顔を覗き込んでくる。
    視界いっぱいにキミの顔が目に映る。
    初めてこんなしっかりキミの瞳を見つめたかもしれない。悩みなんて無さそうなくらい、真っ直ぐ透き通っていて綺麗。というかそもそも普通に可愛い…とまで考えて慌てて頭を振る。何だか急に恥ずかしくなってきた。決死の思いで弱々しく声を上げる。

    「……ア……アノッ…チ、チカイ……ッ」

    熱い。全身の温度が上がっていくのを感じる。少なくとも、風邪でも引いたのかと勘違いする程には。
    ゴンッと小さく鈍い音がした。背中に硬くて冷たい感触が伝わる。それでも熱は冷める事を知らず、それどころか、背中の感触がどんどん温くなっていく。
    多分今ボクは、とても他人に見せられないような、とんでも無く腑抜けた表情をしてるんだろう。自分の力じゃ、この緩みきった頬を引き締めることができない。

    「え?わ……えっと…ごめん…」
    そんなボクの様子を見て、そっと飛びのける。気まずそうにしながらも、どこか嬉しそうに照れ笑い。
    何がそんなに嬉しいのだろう…散々振り回しやがって…。この天然タラシに怒りを感じた。それでも、それでもまあ…悪くはなかったかな…
    ぼんやりした頭に、そんな考えが過ぎってしまってハッとする。なにを…なにを考えてるんだボクは…もう、嫌になっちゃう。これだから…ボクはキミの事が…

    「あ、そうだ。晩御飯。」
    「………エェ…?」
    甘ったるい空気に水を差すように発せられた言葉。戸惑いを隠しきれない。

    「そうだよ!晩御飯!折角だし一緒に作ろうよ!!」
    だらしなく壁に寄りかかって、ヘロヘロのボクの手を掴んで引っ張り上げようとする。
    「今度はナニ…?お料理スルノ…?」
    「うん!」
    上手く力が入らないボクの手を、力いっぱいに引っ張ってくる桃色の手。それを頼りに、のぼせきった身体に鞭打ってふらふらとキッチンまで足を運ぶ。

    「ぼくこう見えても料理、出来ないことは無いんだよね〜!ワドルディの方が上手だけどさ!マホロアはした事ある?」
    「……マァ…ほんのチョットだけナラ…」

    昔、それこそ大昔に何回かだけ、簡単な物を作った経験ならある。だけど食事なんて、ただ栄養が取れればいいじゃないか。そう思って、ここ数年は全くの手つかず。前はなんで作ったんだっけな…

    …ああ、そうだ。思い出した。あの道化師だ。アイツも何かと五月蝿くて、例のゼリーを不味いだのなんだの酷評した挙げ句、結局料理するハメになって…そんなにあのゼリー、変かな…ボクの故郷だと皆食べてたのに、他の星に行くとやたらめったら酷評される。
    …懐かしいな。今何処で何をしているのだろう。

    「冷蔵庫あけるねー………お、良かった〜、これなら何とかなりそう!」
    どうやら最低限の材料はあったみたいだ。最後に確認したのはいつだっただろうか。長持ちするように軽く魔術でなんとかしてた筈だから、消費期限とかは多分大丈夫だとは思う。もし腹でも壊したら、その時考えよう。

    「何なら作れソウ…?」
    「ん〜〜…カレー…とかどう?」

    なんてベタな…まあ逆にそれくらいじゃ無いと難しくなるから丁度良いのかもしれないけど…。
    でも、お泊り会としてまずやる事がカレー作りって…何…ボクがおかしいの?ちょっと変な感じがする。

    手分けして作業を進める。ボクが材料を切る係で、カービィが洗う係。その後は一緒に煮込んだり何だりする予定。

    「…カービィ、手が止まってるヨォ?ボサッとしてないで、ササッと自分の手動かしたらドウダイ?」
    「あ、ばれてた?えへへ…君があんまりにも綺麗に切るもんだから、ちょっと見惚れちゃってたかも。」
    「…ナニソレ…全くモウ…」

    そんなこんなで、特に問題も無くカレーが出来上がった。材料も腐ってなかったし、上出来だ。

    「ん〜〜!おいひ〜〜!」
    「…ウン…確かにオイシイ…カモ」
    口ではそう言ったものの、正直今までで一番美味しい。かも、なんてもんじゃない。

    「ね!いや〜、ワドルディが言ってた通りだったなあ〜!隠し味にりんご入れると、いつもより甘くて美味しい!」

    詳しく聞いていると、どうやらそこそこ前から、偶にバンダナ君に料理を教えてもらってるらしい。バンダナ君が料理得意なのは知らなかったけど、何だか不思議としっくりくる。

    「あのね!ぼく、勿論食べ物は全部好きなんだけど、中でもリンゴとトマトは格別!この星の果物とお野菜、ほんっと〜に最高なんだよ!!今度持ってくるからマホロアも食べてごらんよ!」
    「へ〜、ソレは楽しみダナァ!是非ともヨロシク頼むヨォ。」

    リンゴか。カービィはリンゴが好きなんだ。覚えておいて損はないかも。なんて、なんとなく考えてみたり。

    「…隠し味もそうだけど、やっぱりいつもより美味しいのは、君と一緒に作ったカレーを一緒に食べてるからかなぁ?」
    食べかけの山盛りカレーを見つめながら、小さく微笑んでぽつりと呟く。

    「…エ?一緒に…一緒にやってるだけで味が良くなったりスルノ?」
    ただただ純粋に、疑問だったから聞いてみた。おかしな話だ。別にボクは特別な事なんて何もしてないのに。

    「そうだよ〜!一緒にやるといつもより嬉しくなっちゃって、食べ物にもその気持ちが伝わるの。それで、増々美味しくなるんだ!」
    「……フ〜ン…」

    思ったよりも非科学的な話で、少し期待外れ。呪いかなんかの類だろうか?
    それでも、多分全くの嘘っぱちって訳でも無さそうだな、とも感じた。だって、現にこのカレーは凄く美味しいんだから。

    「ごちそうさまでした〜!」
    「…ゴチソウサマ。」
    食べる時の挨拶なんて、本当に久し振り。最悪子供の頃以来かもしれない。

    その後は、二人で一緒にボクのゲームで遊んだり、今までしてきた数々の冒険の話を聞いたり、チャレンジステージのスコア更新に挑戦したり、他愛も無い談笑をしたり…時間が経つのも忘れて、思いっきり遊んだ。まるで、打算だとか嘘だとかで繋がっている"偽者のトモダチ"じゃなくて、"本当のトモダチ"として、みたいに。

    「あ〜〜〜、遊んだ遊んだ!楽しかった〜!」
    仰向けになって寝転がる。
    「…マホロアも、楽しかった?」
    そして、側に座ってるボクの方をちらりと見上げて、聞いてきた。

    「……ウン」
    楽しかった。楽しかったに決まってる。楽しすぎて、どうかしちゃうんじゃないかってくらい。

    「……また、しようね。お泊り会。」
    「…マタ?」
    「うん!今度はぼくん家おいでよ!ローアと比べるとちょっと狭いけど、でも一緒なら絶対楽しいよ!」

    身振り手振り、その可愛らしい全身を使いながら、必死に喋りかけてくる。

    「だから、だからさ?…そんなに寂しそうにしなくても良いんだよ…?ね?」

    全身がビクッと小さく跳ね上がった。
    ……は?寂しそう…?このボクが?ドウシテ?

    胸に手を当てる。…いつもより心拍数が上がってる。こういうのは大体、運動のしすぎか、それか図星を突かれた時。
    前者もあながち間違いではないだろう。今日は久し振りによく動いた。運動不足の体には十分すぎるくらいの負荷。

    じゃあ、なんだ?この強烈な痛みは。痛くて痛くて、死んじゃいそうなくらい、堪らなく苦しい。頭の中で、何度も何度も"寂しい"がぐるぐる反響する。
    暗い。暗い暗い、底なしの深海に沈んでいくような感覚。呼吸の仕方も分からなくなって、息が苦しい。強い水圧に胸が締め付けられて、どうにもできない。
    動悸が荒くなる。

    なにか…なにか喋らないと…怪しまれるだろう?変だと思われちゃうだろう?
    早く動けよ。なんで?押さえつけられてるみたいに口が動かない。口どころか、全身金縛りにあったみたいだった。
    ただただ、一向に静まらない己の心臓の鼓動を両手で感じることしかできない。

    誰か…お願いだから、誰か助けて…




    「だいじょーぶ、だいじょーぶ。君は独りじゃないよ。」

    ふと、冷たく冷え切った身体に、あったかい温もりを感じた。
    霞む視界の中必死に目を凝らすと、どうやら今ボクは、小さなまんまるの腕の中のようだった。ボクを抱きながら、頭をぽんぽんと撫でてくる。…ちょっとくすぐったい

    「……カー…ビィ?」
    何でそんな事してるの、とでも言うような声を小さく出す。そんなボクに、キミはただ「大丈夫」ばかりで答えてくれない。

    蟋蟀の声がする。夜の静けさを感じる。
    でも、いつもの孤独感はこれっぽっちも……とまでは行かないものの、少なからず、ちょびっとは減っていた。

    心に空いた穴に、隙間風が通る。なんだかゾワゾワする。すっごく変な感じ。

    不思議だな。キミとこうしていると、何故だかこの身スベテを委ねて、託したくなってしまう。俯向いて胸に顔を埋める。

    「…泣いてるの?」
    「……エ?」

    思いがけない言葉に思わず顔をあげる。確かに視界が潤んで良く見えない。ここで初めて自分の涙の存在に気付く。泣いたのなんて、本当に久し振りだから分からなかった。

    「…ドウシヨ…止まんないカモ…」
    久し振りすぎて、泣き止む方法も忘れてしまった。
    「良いんだよ、泣いても。弱くたって大丈夫。」
    そういって柔らかく微笑みながら、ボクの頬に手を寄せて涙を拭ってくる。

    あったかい。本当に、何もかもを包み込むようなその手も、身体も、全てを赦すような慈愛の心も、表情も。何もかもがあったかい。

    このままずっと、こうしていたいな。心の埋まらないからっぽを感じながら、それでも心底キミを望むボクがいる。
    この先の未来も、過去も、全てを捨ててしまいたい。



    ---逃げるノカ?

    途端に冷たい声がする。………気がした。

    -------マタ、何もやり遂げナイまま逃げ出すノカ?

    無意識に拳に力が入る。
    チガウ。チガウチガウチガウチガウチガウ。ウルサイ。ウルサイウルサイ!
    頭の中の声が鳴り止まない。歪む視界。顔の筋肉が緊張して強張る。



    「…マホロア?大丈夫?」
    微かにキミの声がした。

    その手を取りたい。タスケテって声に出したい。でもそんなの、赦されない。できない。
    いつだって、もう一人の自分と、あの目がボクの背を見てる気がするから。焦りが生まれる。早く、早く手に入れなくちゃ。そうすれば、この頭のノイズも鳴り止む筈だ。

    ☆--------------------☆

    「ねえ、マホロア?聞いてる?」
    ハッとする。キミの心配そうな顔が脳裏に焼き付く。
    どうやら、何度も何度も話しかけられていたみたいだった。五月蝿すぎる己の心臓の音と頭の声で、全然気が付かなかった。

    ふと、過った疑問を投げかける。

    「……ネェ…」
    「…?なあに?」
    「ナンデ…ドウシテ、そんなに見ず知らずのボクなんかに優しくできるノ…?」

    こんな、こんな見ず知らずの、よく分からないヤツに。まして、嘘ついて騙してこれから裏切ってやろうだとか考えてるヤツに。
    明確なメリットもなければ、真意が分からないような相手に、こんなに寄り添うなんて普通しない。勝手に信頼を置いて、期待を寄せて、後で勝手に自分で絶望する事程馬鹿らしいことはないと思う。
    結局、どうしたって裏切られるんだから。

    嘗て、未知の魔力とテクノロジーが眠る約束の地…なんて呼ばれたあの場所を思い出す。あそこだって、そうじゃないか。長い間胸に期待を膨らませ、いざ行ってみるとどこもボロッボロ。それに加え、滅んだ原因は派閥同士の対立、争い、追い出し。
    こんなの、結局…何も変わらなかった。ボクの故郷と一緒じゃないか。そんな事もあって、今はハルカンドラを皮肉も込めて"故郷"と呼んでいる

    この目の前のピンク球のヒーロー様だって、性根はわかったもんじゃない。いつ手の平を返されたって何も言えない。
    それでも、少しでも知りたくて。
    "なんで優しくできるのか"なんて聞いた所でなんの意味もない事は分かってるけれど。

    「なんでって…そりゃあ、友達が困ってるから…?」
    君こそなんでそんな事聞くの?とでも言いたげな、困惑した表情で見つめてくる。変なの、と思うのと同時に、星のカービィってのはこういう生き物だったな、とも思った。
    元はといえばキミが優しくしすぎるせいでもあるんだからな、なんて内心八つ当たりしつつも、確かにどこかで安堵して喜んでるボクもいて。

    今日という日の事、このお泊り会の事は、多分一生忘れないだろう。良い意味でも、悪い意味でも。
    もうじき無くなるであろう、この呆れ返るほど居心地の良い腕の中が名残惜しくって、身動きが取れない。

    まあ、今日くらいは…良いよね。
    今日くらい、カミサマも赦してくれるよね。

    キミの顔に頬を寄せる。柔らかい。ぬいぐるみみたいだ。

    意識が沈んでいく。瞼が重い。
    ほわほわした頭の中で浮かんできた言葉を口にする。縋るように。

    これから先、何があっても…ずっと。

    ☆--------------------☆

    …ずっと、友達でイテネ。

    そう吐き捨てるように呟かれた言葉を受け取った直接、腕にかかっている重みが増した。といっても、元々が軽いから大した事ないけど。

    「マホロア?…寝ちゃった?」

    すーすーと寝息と立てながら、どこか不安気な表情を浮かべている。今日を経て、なんとなく前から抱いていた違和感の正体が分かった。

    ---何かに怯えてる?

    背中を丸めて、僅かに震えていた冷たい身体。弱々しい声もあの涙も、間違いない。
    でも、だとしたら何に?

    「やっぱりわかんないなぁ、君のこと。」

    分かってあげたいけど、何にも分からない。お喋りの癖して、自分自身の事はちっとも話してくれない。でも、さっきの言葉はきっと本心なんだろうな。今までのどの言葉より一番、らしくなかったもん。

    初めて会ったあの日からずっと抱き続けてきた感情が、日に日に大きくなってくのを感じる。君の弱い部分を見ていく度に、"それ"はどんどん強くなる。

    守ってあげたい

    この子は、ぼくが守ってあげないといけない。一目見たときから不思議と、その雰囲気に惹き寄せられて抱いていた気持ち。
    未だ腕の中の、ぼくよりもちょっぴり大きい、だけどか弱くて脆い身体を抱き直す。
    多分君は、その背中に抱えきれない程大きな物を、たっくさん背負ってるんでしょ?なら、それをぼくにも一緒に背負わせて欲しい。君にだけ辛い思いさせたくない。
    悪いユメなんか、食べてあげるから。

    「お布団どこかな?」

    君を抱きかかえながら、辺りをきょろきょろ見渡す。すると、まるで道案内でもしてくれてるかの様に、廊下の奥の方の電気が一つだけパチッとぼくらを照らす。それと同時に、なんだか"こっちだよ"って言われてる気がした。

    そういえば、前にマホロアが"この船にはココロがある"って教えてくれたっけな。

    「…ありがと、ローア。」

    ローアといえば、パーツ集めも頑張らなくちゃ。早く直してもらえるように。
    やっぱりマホロアって凄い。ゲームもそうだし、こんな大っきい船の修理だってお手の物。ぼくじゃ絶対に出来ない。

    「…カービィ……」

    耳元で声がした。起こしちゃったかと思って一瞬ビックリしたけど、どうやら寝言だったみたい。
    ぼくの夢でも見てくれてるのかな?
    僅かにぎゅっとぼくを握る手の力が強くなったのを感じる。それに釣られて、ぼくも君をちょっとだけ強く抱きしめる。

    いつか、いつか色々落ち着いて、君の心の不安も落ち着いたら。ちょっとずつでいいからさ。

    「君のぜんぶ、ぼくに教えてね。マホロア。」
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