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    みやもと

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    文置き場

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    みやもと

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    パンドロが昨夜のことを思い出す話

     はあ、と意図せず口から熱い息が洩れる。心なしか火照る頬を手で押さえつつ、パンドロは噴水の縁に腰を下ろして俯いた。
    (昨夜……)
     考えないようにしてもつい脳裏に浮かんでしまう、昨夜の出来事。パートナーであるリュールと共に過ごした夜のこと。
    (……リュール様……すごかった……な……)
     は、と吐く息がまた熱を帯びてしまう。一度思い出せば次々に昨夜のことが蘇ってきて、次第に赤くなっていく顔を止められなかった。
    (なんかもう、……途中から訳わかんなくなって覚えてねえけど……)
     昨夜のリュールはいつもにも増して情熱的だった。激しいばかりではなく何度もパンドロを求めてきて、気がふれてしまいそうなぐらいの快楽を感じさせられた。それに。
    (……パンドロ)
     繰り返し名を呼ぶ声を思い出せば、今でも容易にぞくりと身体が熱くなる。うつくしいリュールの顔が欲に染まり、ただひたすらにパンドロを求めてきた。
    「……っ」
     思わず自分の腕を掴んで小さく息を吐く。気を抜けばそのまま記憶の中のリュールとの交合に溺れてしまいそうで、パンドロは慌ててかぶりを振った。
    (しっかりしろオレ、まだ昼間だぞ)
     思い出すな、と必死に自分に言い聞かせてみるものの、そう思えば思うほど頭に浮かんできてしまう。
    (パンドロ……)
     切なげなリュールの表情。腰を掴む手に力が籠もって、更に激しく動いてきて――
    「わーーーーーーーーーーっ」
     耐えかねて両手で顔を覆いパンドロは思わず叫んでしまう。叫んでしまった後でその声がソラネル中に響き渡ったことに気づき、ご、ごめんなさい、と誰に聞かせるでもなく謝ってしまった。
    (何やってんだよオレ……)
     うう、と呻きつつ、気を取り直して立ち上がり噴水の側を離れようとする。だが。
    「パンドロ」
    「わ」
     いきなり名を呼ばれて思わずびくりと肩を震わせる。振り返ったそこにいたのは、先程まで何度も脳裏に姿を思い描いた張本人だった。
    「りゅーる、さま……」
    「先程とても大きな叫び声が聞こえましたけど、何かあったんですか?」
    「……ご、ごめんなさい……何でもないです……」
     無駄に騒いでしまったことと、なによりリュールが現れたことでパンドロは余計に消え入りたい気分になってしまう。何もなかったなら良かったです、と微笑むリュールが眩しくて尚更居たたまれない心境になってしまった。
    「でも、逢えて良かったです。パンドロの様子が気になっていたので」
    「オレですか?」
     リュールの言葉に目を瞬く。叫んでしまったのはひとまず解決したとして、いつの間にか自分は彼に心配をかけるようなことをしていただろうか。小首を傾げたパンドロに、はい、と頷いたリュールはどことなく頬が赤らんでいるように見えた。
    「その、……昨夜は……無理を、させてしまったのではないかと……」
    「あ、……」
     言った端からリュールは今度ははっきりと頬を赤らめる。言わんとしていることを即座に理解してしまい、パンドロもつられて顔を赤くしてしまった。
    「……だ、大丈夫です。オレ頑丈ですから」
     安心させるべくパンドロは努めて明るく笑ってみせる。頬が赤くなってしまうのはどうすることもできなかったが、その様子を見てリュールがほっと胸を撫でおろしていた。
    「それならばいいんですが。……本当に済みませんでした」
    「い、いえ! リュール様が謝られるようなことでは……」
    「いいえ、謝らせてください。……昨夜は本当に……どうかしていたというか……」
     言いながら昨夜のことを思い出しているのか、リュールの顔が更に赤くなる。しかしひとつかぶりを振ると、改めてまっすぐパンドロを見つめてきた。
    「……違いますね。どうかしていた訳ではなく、私の本当の欲求でした」
    「リュール様……?」
    「どうしてもあなたのことが欲しくて堪らなくて……あなたを離すことができませんでした」
    「っ、」
     まだ顔は赤くても、揺らがぬ瞳が真実を伝えてくる。パンドロが驚き目を瞠ると、リュールがこちらへ近づきそっと頬に触れてきた。
    「……こんなにも狂おしいぐらいの感情があることを、私はあなたのお陰で知ることができました」
    「リュール様……」
     触れている手の優しさに、リュールが自分を慈しんでくれていることが強く伝わってくる。どう返せばいいのか考えあぐねて、パンドロは頬に触れるリュールの手に自分の手を重ねてみた。
    「……嬉しいです。オレも……いつも、あなたへの想いが溢れそうなほどなので……」
    「パンドロ……」
    「勿論今もそうですが、……昨夜沢山触れ合えたことも、とても……嬉しかった、です」
     羞恥をさておいても、リュールと抱き合えたことが嬉しくない訳がない。せめてこの気持ちは伝えたいと微笑めば、リュールが少し息を呑み切なげに目を細めた。
    「……ごめんなさい、パンドロ」
    「え、」
     頬に触れていた手が離れたと思ったのも束の間。背と腰に腕が回り、気づけばリュールに抱きしめられていた。
    「あなたのことが愛しくて、触れずにいられません」
    「……っ」
     紡がれる言葉に否応なく胸がいっぱいになる。腕の中にそっと身体を預けながら、パンドロもリュールの背を抱き返した。
    「……今夜も、あなたに触れたいです」
     いいですか、と耳元で囁かれれば、パンドロにはひとつしか答えが思い浮かばない。
    「……はい」
     頷きリュールの顔を覗き込むと、どちらからともなく顔を寄せて口づけた。
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