目の前にあるのはリュールの部屋の扉。少し前からここに立ち尽くしたまま、パンドロはじっと扉を見つめ続けていた。
夜更けのこの時間はソラネルのどこもかしこも静まり返っている。当然この部屋の主も休んでいるに違いないし、まだ起きていたとしてもこのような時間に部屋を訪れるなど迷惑以外の何物でもないだろう。当然のことだと頭ではきちんと理解していて、実際にもう何度も躊躇い引き返そうとしたのだが、結局こうして部屋の前まで来てしまった自分をパンドロは情けなく思った。
(……分かってるのにな……)
それでも諦めきれなかったのは、どうしても逢いたいという自分の気持ちに負けてしまったからだ。今朝だって顔を合わせたのだし、明日になればまた逢えるということも分かっている。それでも、どうしても今パートナーの顔が見たくて堪らなくて、この胸にある想いを抑えることができなかった。
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