【二次創作】マカロンを食べる話(春クリ)「マカロンを食べに行きましょう」
放課後、クリスが春に提案する。なんでも、クラスメイトと食べたマカロンがおいしかったのだそうで、お店を聞いたから一緒に食べに行こうとのことだった。
「いいですね、行きましょうか」
「ありがとうございます!」
クリスが嬉しそうに言う。その笑顔はまぶしく、春の心も自然と明るくなる。
***
「このお店なんです」
レンガ造りのレトロな店の前で、クリスが言う。
「おしゃれなお店ですね」
「そうなんです。お菓子もとてもおいしいんですよ」
クリスが扉を引く。チリリン、と鈴の音が鳴って、店員の穏やかな声が耳に届く。
「いらっしゃいませ」
店内は明るく、BGMも可愛らしい。
「あれがマカロンですね」
春がショーケースのお菓子を見てつぶやく。クッキーやフィナンシェ、マドレーヌなどのメジャーなお菓子に混じって、箱に入ったマカロンや、可愛らしい缶に入ったカラフルなチョコレートなど、色々なお菓子が置いてある。
「どれもおいしそうですね」
クリスが身を乗り出して言う。彼女はもともとこういう店が好きなようで、目をキラキラと輝かせている。
「春さんは何が食べたいですか?」
「クリスさんにお任せします」
クリスはうーん、と少し考え、じゃあ、とつぶやいた。
「マカロンの詰め合わせと、紅茶をお願いします」
「では、私も同じものを」
店員が注文を受けて、テーブル席へと案内する。
「楽しみですね」
「はい、とても楽しみです」
春の隣に座るクリスは、ニコニコとして嬉しそうだ。そんな様子を見ていると、春も自然と口元が綻んでくる。
「春さんは、マカロンを食べたことはありますか?」
「いえ、今回が初めてです」
クリスは年下ながら大人びた感じの女の子というイメージだったが、こうして話してみると、無邪気でかわいらしい女の子という印象だ。大人びた子とこういう会話をすると、どんな話題を出せばいいのか戸惑ってしまうが、クリスとの会話は自然体でいられた。
「お待たせしました」
店員がマカロンと紅茶を運んでくる。2人で、わぁ、と声をあげる。
「かわいいですねぇ」
「どれから食べましょう」
クリスが可愛らしいピックを手に取り、呟く。
「たくさんあって迷ってしまいますね」
春は答えつつ、薄茶色のマカロンをひとつつまむ。さくっと音がし、口の中でチョコレート風味の甘さが広がる。生地に挟まれたガナッシュがキャラメルのようで、独特の食感がする。
「紅茶も、このお店のオリジナルブレンドなんですよ」
クリスが、カップに手を伸ばしながら言う。春もさっそく飲んでみる。甘すぎないまろやかな味わいに、ほのかなオレンジの風味がある。
「おいしいです。なんだか落ち着きますね」
「はい、とっても落ち着きます」
甘いものと紅茶でまったりとした時間を堪能する。
ふふふ、とクリスが微笑む。それを見て、春もつられて笑う。
2人でマカロンを食べ、紅茶を飲む。無言でまったりとする時間もあるけれど、それも楽しい。春の目の前に座るクリスの笑顔は、いつまでも眺めていたいような、そんな魅力があった。
「あっという間になくなってしまいました」
「よかったらこれも食べますか?」
春はそう言って、マカロンをひとつ、クリスの口元へ持っていく。
クリスはぱちりと瞬きし、頬をほんのりと赤く染める。
「えっ、そんな、いいです」
「遠慮しないでください」
「でも、そんな……恥ずかしいですよ」
照れるクリスがかわいいので、春はつい、いたずらしたくなる。
「はい、どうぞ」
優しく、クリスの口元へマカロンを近づける。
「う……」
上目遣いに見つめてくるクリスが、意を決したように口を開き、マカロンを食べる。
もぐもぐと咀嚼して、それから、ぱぁっと笑顔になる。
「おいしいです」
ほんのり赤く染まった頰が緩んでいる。とても嬉しそうだ。
そんなクリスを見ていると、春も幸せな気持ちになる。
しばらく、2人でお茶を楽しんでから、店を出た。マカロン以外にも焼き菓子をいくつか買って、その日は帰宅したのだった。