高嶺が雨宿りする話怪異の捜査中、急に雨が降ってきた。高久は永嶺を抱き上げて神社へと入る。
「しばらくここで雨宿りをさせてもらいましょう」
「そうだな。……もう降ろせ」
「あ、そうでした」
高久が抱えていた永嶺の身体を下ろす。
永嶺は高久から離れ、ふいと横を向いた。しかし顔が赤い。
「永嶺様?どうかなさいましたか?」
「いや……なんでもない」
高久が心配そうに尋ねると、永嶺はそっぽを向きながらそう返した。
「……もしかして、照れていらっしゃいますか?」
「なっ……! 何を馬鹿なことを……!」
図星をつかれた永嶺は反論しようとしたが、うまく声を出すことができなかった。
「すみません、少し調子に乗ってしまいました」
高久は申し訳なさそうに謝った。
「……べつに怒ってはいない。ただ、恥ずかしかっただけだ」
永嶺は小さな声でそう答えた。
「そうでしたか、良かったです」
高久は安堵の表情を浮かべていた。
2人の間に沈黙が流れる。雨が地面を濡らす音がやけに大きく聞こえた。
しばらくして、永嶺が口を開いた。
「なあ、高久」
「はい、なんでしょう?」
「……その、いつも感謝している。いつも、私を守ってくれていることに」
「えっ……?」
唐突な永嶺の言葉に、高久は驚いた様子だった。
「たまには、礼を言ってやろうと思っただけだ」
永嶺は照れているのか、顔を背けたまま言った。
「ありがとうございます。でも、その言葉だけで私は十分嬉しいです」
「……本当に馬鹿だな」
永嶺は小さく呟いた。
「ん?何かおっしゃいましたか?」
「……なんでもない」
「雨がまだ強いですね……。永嶺さま、寒くはありませんか?」
「ああ、大丈夫だ」
永嶺は頷いた。しかし、身体は少し震えていた。
高久はそれを見て、自分の上着を脱いで永嶺の肩に掛けた。
「おい、何をする」
「寒いのでしょう?私ので良ければお使いください」
「……お前も冷えてしまうだろう」
「大丈夫ですよ。私はこの中あたたかいですし、それに、こうしていれば近いので暖まりますよ」
高久は永嶺の手を取って握った。
「……馬鹿もの」
永嶺はそう言ってそっぽを向いた。その顔は少し赤かった。
その後、雨が止むまで2人は手を繋いだまま身を寄せ合っていた。