タイトルなし 人肌の温度に温かいタオルを渡されたレッドはやけに感慨深い気持ちに襲われている。泥だらけの己の身体を拭いながら。
紆余曲折を経て始めたグリーンとの同棲生活ではあったが、お互いのことなど知り尽くしていると豪語していた日々を懐かしく思うほど小さな発見や驚きに溢れていた。このタオルとてそうで、グリーンは泥だらけで帰ってきたり、髪に大量の小枝を絡ませていたとしても小言を出してくることはなかった。ただ端的に「待て、それ以上進むな、絶対にだ」と告げられて、そうして手渡されたタオルに静かに感じ入っている。何をしてきたらそんなことになるんだとか、きっとそういうのは彼の気にするところではないのだ。靴下を脱いで素足になる。
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