ワンライ浴衣続き(没) シンプルな布地から覗く二の腕には半袖の日焼け跡が残っていて、よく引き締まったそれがせかせか動くのを、凪は他人事のように感心しながら目で追っていた。
自身が映った目の前の姿見は、漆塗りの縁で高級感があるもののほんの少しだけ埃をかぶっていて、こいつならこういうとこも見落とさないんだけどな、と背後に立つ馬狼を鏡越しにじっと見つめた。
「クサオ、腕上げろ」
「うぃ」
言われたとおり両腕を持ち上げれば、正面に馬狼の手が回ってきて、帯が腰に巻きつけられる。そのまま力強く締められ、背中で結び目を作る衣擦れの音を仕上げに浴衣の着付けが終えられた。
「ふーん……手際いいね」
「はっ、当然だろ。つか人に頼んな、テメェでやれ! 煩わせやがって」
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