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    寝不足さんの漫画(https://x.com/syunsai_h/status/1822299969111667079)とねんけあきから生まれた小話たちです。お許しいただいた寝不足さんに感謝です

    ##K暁

    小さな僕とKKはそれぞれの血液とエーテルからできているので見た目も行動も僕らのそれを元にしている、らしい。小さい分、簡略化されているのと喋れないんだけど。
    「あ?んだよ、まだ……五本は多い?喋れねえクセにうるせえなあ」
    ぶつくさと文句を言いながらも咥えかけた煙草を元に戻し、小さい僕が差し出したガムに手を伸ばす。
    僕の時はもっと言い返してくるのに!その指先で頬をつつくの何!?後ろからでもにやけてるのわかるんだけど!
    嫉妬の炎はチャージショットにも負けないけど、KKにぶつけることはできない。僕はただの年下の相棒で、今はほぼ弟子の立場だ。それ以上を望むのは強欲が過ぎる。
    ため息を飲み込みながらジャケットを脱ぐとコロリと小さい影が受け身をながら着地した。
    「あれっ、いつの間に!?」
    小さいKKは一匹狼気質が強いのかすぐいなくなると思うとこうやって僕の服に隠れていたりする。
    「狭いところが好きなのかな……」
    驚かせてごめんねと手の平を見せるとよじ登ってよじ登って僕の肩まで到達する。
    「……それとも高いところ?」
    少しでも好かれたいと頭を悩ませる僕は大小のKKが激しく睨み合っていることに気づいていなかった。

    ※ ※ ※ ※ ※ ※

    チビ暁人はデカいのと同じようにエーテル操作が不馴れらしい。家具の隙間に落ちた遺留品を引っ張り出してこれたと思うと力なく座り込んだ。
    オレが一言掛ける前に小さな影が死角から走ってくる。最初はGの付く虫かと思ったが今ではもう慣れた。
    「オマエ、どっからわいてくるんだよ」
    チビのオレ、と認めたくないが、は普段デカい暁人にこっそりへばりついてる癖に何かあるとチビ暁人の無事を確認し、エーテル切れなだけなのを確かめると、
    チュッ
    自分のエーテルを口移しで分け与える。
    「あれー小さいKKそっちにいるー?」
    キッチンから呑気な声が聞こえてオレは慌てて部屋の戸に立ち塞がった。
    「いるからオマエはコッチに来るなよ!」
    「えー?まあいるならいいけど」
    手の平サイズのクセに音を立ててキスを繰り返すコイツらを見せるわけにはいかない。まして幸せそうにチビ暁人の頭を撫でるチビのオレなど。
    「補給が終わったならさっさと帰れ!」
    キッチンに聞こえない程度に怒鳴り付けるとチビのオレは舌打ちをして出ていった。やはり呑気に手を振って見送るチビ暁人がどこまで本物と同じなのか知る術はない。
    もしもオレが暁人にキスしたいなどと伝えたら。
    「……考えても仕方ないか」
    改めて遺留品を差し出すチビ暁人の頭を指先で撫でてオレは資料作りに戻った。

    ※ ※ ※ ※ ※ ※

    小さい暁人さんと小さいKKは仲がいい。それぞれ大きい相手に付いてサポートするように設定されているみたいだけど安全な場所では時々くっついているのを見かける。
    大きい暁人さんと大きいKKも仲がいい。KKが年上として能力者としてサポートしているようで暁人さんが来てからKKは心身共に健康的になったとは凛子のセリフだ。
    「え、なにこれ」
    シャワーを浴びて来た暁人さんが絶句する。アジトに新しくできたコーナーにはミニチュアの家具があって、主に私が買い足してるんだけど、ソファーで小さい暁人さんが小さいKKにくっついて寝ている。式神は寝たり食べたりは必要ないらしいんだけど小さい暁人さんは小さいKKに全身を預けて気持ち良さそうだ。小さいKKも小さい暁人さんに寄りかかられて体勢が辛そうなのに気にせず小さい暁人さんを見ている。
    大きい暁人さんが汗だくでアジトに来て、浴室に入る隙に小さいKKがリビングに来てからこうなるまで一部始終を見ていた私は
    「仲良しだよね」
    と素直な感想を口にした。
    「仲がいいっていうか……小さい僕、ベタベタしすぎだろ。KK嫌がってないかな?」
    暁人さんは恥ずかしそうに困ったように助けを求めるように私に言う。
    暁人さんが心配していることはわかる。KKに好きだって知られたくないんだよね。でもKK以外みんな知ってるし、KKだって暁人さんに甘えられたらすごく喜ぶと思う。もちろん私からは口裂けになっても言えないんだけど。
    「あっ、そろそろ大きい方のKKを起こさないと」
    「えっ、もうそんな時間!?ほら小さい僕、起きろよ!」
    やや乱暴につまみ上げられて悲鳴を上げる小さい暁人さんとちょっと怒るけど大きい暁人さんを見てフッと鼻で笑う小さいKK。
    やっぱりKKは暁人さんが大好きなんだよね。
    二人が気づくまで放っておこうと凛子は言ったけど、早くその時が来たらいいのにと私は思った。

    ※ ※ ※ ※ ※ ※

    猫か何かに顔を叩かれてKKは目を覚ました。というかいつの間にかアジトのソファーでうたた寝していたらしい。
    未だ叩いてくる何かを払い落とす。痛みはないが不快だ。トドメを刺すかと床を見ると自分そっくりの小人がKKを睨み付けている。
    「オレはオマエの主人だろうが」
    KKの一部を使われた式神のような小人は主人の命令が絶対で、主人の身代わりとなるように作られているはずだ。
    なのに小さいKKはいつの間にかできたアジトの式神コーナーに行くと絵梨佳が買ってきた人形用のベッドを叩いてみせた。
    そこには小さい暁人が灰色のクッションを抱えてちょこんと座っている。
    小さい暁人は喋れないせいか本物より表情豊かで、今は凛々しい眉を八の字に下げている。何やら困っているらしい。わかっている。小さいKKは自分の一部で、そして自分以上に暁人が基本的な行動理由だ。
    「枕は二つ用意しただろうが」
    実際に作ったのはKKではないがこの場にはKKしかいないのでそう言うと小さいKKは小さい暁人の隣に転がって何かしらのジェスチャーをした。
    「あ?んだよ……布団か?」
    ぱっと暁人の表情が明るくなる。確かにベッドに枕があって布団がないのは不自然だが。
    「オマエら寝る必要がねえだろうが」
    大体ベッドも二人で寝るには狭い。そもそも式神とはいえKKと暁人そっくりなのだ。二人で寄り添って寝る姿など誤解されかねない。
    しかし小さいKKは大きいKKの不安など気にもとめず小さい暁人を抱き寄せるように横になる。小さい暁人も満更ではなさそうに小さいKKに抱きついている。
    「……いや、これは師匠として頼りにしてるだけ……だよな」
    都合のいい幻想を抱かぬようKKは己を律し、布団は買わねえぞと繰り返す。飛んできたクッションを手の平で受け止めて小さいKKの上に落とす。
    「大体サイズもねえだろうし……絵梨佳なら作りかねないが……」
    (まさか布団の中で乳繰りあったりしねえよな?)
    さすがに口には出せない己の願望を見透かすように小さいKKはニヤリと口の端を上げた。

    ※ ※ ※ ※ ※ ※

    小さいKKが小さい暁人を背中に庇うようにして唸り声をあげている。威嚇された祟り屋は棒を引っ込めてわざとらしく両手を上げた。小さい暁人は小さいKKを宥めようとしているがKKは常に祟り屋たちを視界に入れて警戒している。
    式神が攻撃手段を持っていないのは幸いだった。反撃すれば背後にいる大きい暁人が悲しむだろうことは祟り屋でも推察できる。
    「すみません、ちいけけは誰にも懐かなくて」
    弓をしまいながらながら暁人が申し訳なさそうに言う。どうもこの青年には小さいKKの真意が正しく伝わっていないようだ。暁人は荷物をまとめ終えて二体を手に乗せ、弓のケースの上に移動させると律儀に祟り屋たちに会釈をした。
    「そろそろKKも報告を終えて戻ってくると思います」
    「我々も一人行っている」
    「それは……揉めないといいんだけど」
    新たな心配に暁人は本殿の方に首を向けるが小さなKKが気が立った状態なのであまり期待はできないだろう。
    暁人はボディバッグから塩大福を出すとどうぞと勧めてきた。折角なので受け取るともう一つ出す。
    「ちいたちも食べるだろ、半分ずつな」
    ケースに腰掛けた状態で喜んで受けとる小さい暁人と彼に付き合っているだけだと言わんばかりのKK。しかし小さいKKの暁人を見る表情は穏やかだ。
    「いいなあ」
    三つ目のフィルムを剥がしながら暁人が呟き、一口食べてからペットボトルのお茶をあおるとどこからか現れた弓使いの祟り屋が右手を出して問いかけた。
    「何が?」
    「……ちいけけがちいあきしか見てないから」
    塩大福を渡しながら答えてしまった暁人はしまったという顔をしたが祟り屋は布の奥でにたりと笑った。
    「心配しなくても祓い屋は君しか眼中にないじゃん」
    「……どこが?」
    信じられない暁人に祟り屋たちは信じられないと顔を見合わせ、式神たちを指差した。
    「式神の核はお前たちの血とエーテル。故に思考回路も同じだ」
    「要するにこれだけラブラブなのは本体がそうだから」
    「ラブッ!?」
    一瞬で赤面した暁人は周囲を見回してKKが戻っていないのを確認してから
    「それって僕だけでなくKKもってこと!?」
    と声を潜めるので祟り屋たちは再び顔を見合わせた。
    「これは祓い屋の旦那が隠し上手なのと嫁さんが鈍いのとどっち?」
    弓の疑問に棒は答えずそろそろ戻ってくるぞとだけ言って影の中に消えてしまった。
    「あっ!」
    「じゃあ次会う時はお祝い用意しておくよ」
    「何の!?」
    問い詰める前にもう一人も消えてしまう。
    残された暁人は式神たちを見下ろす。食べ終わった小さい暁人に半分の半分を渡す小さいKKの表情はやはり柔らかく幸せそうだ。
    「……僕、最近ちゃんとKKの顔を見れてないかも」
    気恥ずかしさや後ろめたさを自覚して暁人は飲み干したペットボトルをつぶれるほど握ると大きく頷いた。
    「行こう、ちいたち」
    ケースを持ち上げると式神たちはぴょんと暁人の肩に飛び移る。聞き慣れた足音に覚悟をきめて暁人は歩きだした。
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