二十六歳の誕生日にソレはやってきた。
東京という都市を象徴したような狭く雑然としたアジトで広げられる漆黒の夜闇を切り抜いた雨傘、同じく烏のようなスーツに影に曇るワイシャツ。緩められたネクタイすら色彩がなく、自分の心を表しているのか持ち主がそちらの存在であることを見せつけているのか暁人には判別がつかなかった。するであろう鼻につくニオイはしない。
どちらにしても悪趣味だ。
暁人にとってその出で立ちは敵対勢力である視覚的な、一番直感的に判別しやすい材料であったし、にも関わらず攻撃しなかったのはそのいつもは不快しか示さない絵文字のように簡略化された顔が、四年前に死に別れた、いや元々相手は死んで魂だけになっていたし暁人もバイク事故で死にかけていた、一晩限りのかけがえのない相棒の顔をしていた。
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