もっと君を知りたい。 最近のミスルンの悩みは、イマジナリーマインドと言うべきか、横に存在している若い頃の自身だった。
欲求の失われた精神にも記憶はある。思いおこせばどのようなことを考え口にするか想像はつく。当時の自身は戻らない半身のようなものだったのだが、最近は現実にまで干渉してくる。
「あのトールマンとの交際はやめるべきだと思うなあ」
「やめない」
「あと数十年もすれば老いて死ぬよ。子もなせない」
「承知の上だ」
「いつからこんなに強情になったんだろう私は」
「知らん」
「元からかな。だって私は意地が悪くて、劣等感と惨めさに加えてプライドだけが高くて。閉じるべきダンジョンで愚かにも迷宮の主になって仲間に手にかけ、冒険者たちも数え切れないくらい殺し続けた。悪魔に欲を与えた。見た目もみすぼらしく変わり果てて、家からは捨てられてもうなにもない。そんな男を心から愛してくれる存在なんているわけがないもの」
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