もうすっかり日は昇ったというのに、身体を起こすのが億劫で、少しの気怠さも手伝って隣の温もりに誘われるように瞼をとじる。誰かと眠りにつくことがこんなにもいいものだとは思わなかった。
少しみじろいで胸元に頬をよせる。触れた温もりに脚を絡めれば、応えるように腰に腕がまわり抱きとめられる。深く息を吸い込めば胸いっぱいにハーマンの匂いで満たされる。ほぅと感嘆の吐息を溢せば温かな掌が優しくシュバルツの背中を撫でた。
「んっ、…なんだ、起きたのか?」
「可愛いことをしているから、気になってな」
顔を少しあげれば薄青色の瞳がこちらを見下ろしていた。昨夜の欲を孕んだ瞳とはまた違う、甘さを含んだその色に胸に暖かいものが拡がっていく。甘えるような仕草を見られていたと思うと少し気恥ずかしくて、再び胸元に顔を埋めてぽつりと呟く。
「……まだ、起きるには少し早い。」
「…そうだな」
寝て起きたら忘れてくれと願い額を擦り付けてやる。髪を梳く手の優しさがまるで愛しいものに触れるようだと勘違いしてしまいそうになる。寝惚けたふりをして甘えていることすら分かっているのだろう、笑いを滲ませた声色すらも憎めないのだ。離れていく温かい掌と、髪を引かれた軽い感触に口付けられたのだと分かった、余裕のある態度が少しだけ悔しくて身体を伸ばしてその唇に噛みついてやった。