「守沢先輩!」
「む?」
ユニットの練習が終わり、カバンを持って帰ろうと練習スタジオの扉のドアノブに手をかけた守沢先輩の背中に声をかける。守沢先輩は俺の言葉に反応して振り向いた。
声、震えてないかな……。
まだ声をかけただけだというのに手はじんわりと汗ばんでいるような気がするし、心臓もうるさい。
「あの……俺と一緒に……」
守沢先輩が不思議そうに俺を見ている。口ごもってしまう俺の言葉の続きを待ってくれているけど、それが逆に早く言わなきゃ……って俺の気持ちを焦らせる。俯いてしまって守沢先輩の顔が見れない。それでもずっとそうしているわけにはいかない。守沢先輩がいつまで待ってくれるかも分からない。
何度も何度も頭の中で繰り返したイメージトレーニングを思い出す。頭の中の守沢先輩は俺の言葉に笑顔になって頷いてくれている。大丈夫……。勇気を出すんだ……!
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