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    hanato1078

    @hanato1078

    らくがきや短い小説などを壁打ち。
    渉英/零英など英智くん周辺をマイペースに。キャラの左右固定です🙇

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    hanato1078

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    渉英ワンドロさん「正装」
    fine全員います。ES設立一周年の特集で、正装の撮影をする渉英(+弓+桃)の話。

    #渉英
    s.e.
    ##渉英
    #日々樹渉
    #天祥院英智
    tenshoinEiji
    ##小説

    色撮り鳥「なるほど、ESの企画ですか」
    皴一つない黒いスーツに袖を通しながら、渉は英智の話に相槌を打った。

    「うん。どうも、リズリンが以前から懇意にしている雑誌らしいよ」
    彼の話によると、今日の撮影は、とある大手雑誌でESの設立一周年を祝う特集に使う写真らしい。
    大幅にESアイドル達にページを割いてもらえるとのことで、ES上層部__特に強い関わりを持つリズリンのお偉方は、今回の企画に大層気合を入れている、と。そして、リズリンのお偉方は、ES設立一周年祝いというES設立以来の大型案件に、自分たちと強いコネクションを持つ雑誌を推して、半ば強引に撮影を済ませてしまったとか。
    ES創設者である英智率いるスタプロは、そんなリズリンの一つ後の撮影となっている。リズリンがすでに撮影を済ませている以上、他の事務所もリズリンのお偉方が推し進める形で撮影をするしかない。
    分かりやすいよね、と呆れて肩をすくめる英智に、渉はポン、と赤いバラを差し出した。
    あなたにそんな顔は似合いませんよ。そう言いながら英智の胸ポケットにそっとバラを差し入れると、英智は「ありがとう」と言いながら眉を下げて笑った。

    「そういうことだから、今日の撮影はこの正装でこなさなくてはいけないんだ。少し息苦しいと思うけれど、我慢してね。渉、桃李、弓弦」
    どこか苦い音色をにじませる英智の言葉に、3人は顔を見合わせると、勿論、とにこやかにうなずいた。
    普段からフォーマルな衣装を着ることの多い3人にとって、こういったかしこまった衣装を着ることは、色が黒という点を除いて、特に珍しくもない。別段強い抵抗感もなかった。

    「なら、最高にかっこいいボクを撮ってもらわなきゃ! 弓弦、どっか変なところない?」
    「ネクタイの結び目がぐちゃぐちゃでございますよ、坊ちゃま。わたくしが結び直しますから、そちらのソファにおかけくださいまし」
    桃李の拙く結ばれた蝶ネクタイを直したがる弓弦に、自分でできるから!と桃李が頬を膨らませる。そのまま軽い追いかけっこをし始める2人を楽しそうに見つめながら、英智は口を小さく開いた。

    「何言ってるんだろうね、僕。本当に息苦しいのは__我慢しなくちゃいけないのは、多分、僕の方なのに」
    ボソッと吐かれたそれは、小さくて、消え入りそうで__それでいて、はっきりとした輪郭でコーティングされて、渉の耳に届いた。
    何やら、英智には思うところがあるらしい。それを察した渉は、そっと彼の左隣に座った。
    そのままクリーム色の柔らかい横の髪に指を通すと、渉は「どうぞ」とだけ囁いてみる。
    すると、トス、と英智の頭が渉の左肩に乗ってきた。はぁ、と、大きく息を吐いたかと思うと、彼の指は、一番上まで留まったボタンを1つ2つと外し、自分できっちりと絞めた蝶ネクタイを緩めた。

    「ねぇ渉。知っているかい?就職活動で黒いスーツが一般的なのは、学生の個性を殺して、平等に精査するためなんだって」
    唐突にも思える英智の話に、渉は何となく英智の言わんとすることを察して、心の中でなるほど、と顎に手を当てた。と同時に、彼がご機嫌ななめな理由もぼんやりと分かった。
    英智が作りだしたESは、人を人とも思わないようなアイドル工場である。そう言われがちだし、実際その側面は否定できないのかもしれない。だが、彼は、決して、一つ一つの星々が放つ輝きを無個性化してベルトコンベアに並べたかったわけではないのだ。
    薄い唇が、はぁ、と、大きく息を吐いた。

    「おかしな話だよ。僕たちfineの__というか、僕達アイドルの正装は、こっちなのにね」
    英智は、スッと立ち上がると、どこからか、衣装を取り出した。綺麗に正方形に折りたたまれたそれをバサッと広げると、fineが普段のライブで袖を通している、純白の衣装がひらりと揺れた。

    「僕たちは、何にも染まらない黒ではなくて、どんな色にもなれる白だ。僕は、どんな色にだってなりたいし、ありとあらゆる色のいいところを吸収したいし、色んな色になってほしい。そう思ってESを作ったんだ。みんながみんな無個性の黒一色だなんて、息苦しくてごめんだよ」

    どこまでも続いていく晴れた日の空のような水色の裏地が、純白の衣装からチラリと顔をのぞかせている。そんな空と同じ色をした瞳が、無数の星を閉じ込めたような輝きを放ちながら、渉を見つめてきた。

    「どんな星にも輝いてほしくて、僕は星が生まれる場所を作ったんだ。夜空のような黒も全否定はしないけれど、それだけだなんてつまらない」

    英智は純白の衣装の両肩を掴んで、自身の胸の前に掲げる。やはり彼には、白が似合う。

    「だから、黒スーツとは別に、後でそれぞれのアイドル衣装の写真も撮ってもらおう。もうすでに写真を撮り終わった、リズリンの子たちも含め、ES所属のアイドル全員にね。僕たちアイドルがアイドルである以上、絶対にNOとは言わせない。頭の固いお偉方に、ささいな反抗をしてあげるんだ」
    同じ事務所だと角が立ちそうな、敬人や朔間くんのかわりにね。
    そういたずらっぽく笑いながら、英智は長いまつげに縁取られた瞳を煌めかせた。
    英智には、リズリンのお偉方が愛する星々を真っ黒に塗りつぶそうとしているように見えるのだろう。紅月もUNDEADもRa*bitsも、せっかくの特集が無個性な黒スーツだけだなんてあんまりだと口を尖らせる彼の身体には、今も革命児としての血や誇りが残っているらしい。
    ああ、今日も自分の愛しい人は、誰よりも深くアイドルを愛しているようだ。そんな彼に贈る愛がなかなか上手く伝わらないのは、それだけ彼がアイドルに深い愛を贈っているせいなのだろうか。
    でも、今はそれでいい。個性の塊のような自分を一等星のごとく愛している彼が、自分もその一等星から一番愛されているのだと、いずれ必ず自覚してもらうから。

    「あなたのそういうところ、大好きですよ、英智」
    「ふふ。それは光栄だな。あっ、それはそれとして、君のスーツ姿を見ることができたのはラッキーだよ。似合っているね」
    「ありがとうございます。あなたもお似合いですよ、英智」
    「ありがとう。せっかくだから、自分たちでも写真を撮ろうか。渉、ほら、こっち向いて」
    スマートフォンのカメラを向けてくる手に、渉は何も言わずにふんわりと自分の手を重ねて引っ張った。グイっと引かれてバランスを崩した英智の腰にサッと手を回すと、踊るような華麗なステップで、彼の背を自分の方に向かせる。そして、おやおや、と顔を近づけながら、自分の肩に華奢な肩を引き寄せた。
    「あなたはカメラマンではないでしょう、英智?せっかくなんですから、2人で撮りましょう!あなたも私も、アイドルなんですから!」

    そんな渉の言葉に、英智は「それもそうだね」と照れくさそうに眉を下げて笑った。白い頬がほんのりと赤く染まる姿は、何とも可愛らしい。
    いつか、その頬を、もっともっと赤く染めてあげましょう。狭い画面に顔を近づけながら、渉は英智の横顔にチュッと軽くキスをした。

    「えっ、わ、渉?今の……」

    早速真っ赤に染まる頬に構わず、渉は自分のスマートフォンを強引に掲げた。綺麗に撮って、後でこっそり待ち受けにでもしてしまおう。

    「じゃあいきますよ!はい、チーズ!」
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